【火焔樹】 リアルということ

 旅が好きだ。今回はかつての同僚で、現在は新聞社の大船渡通信部に勤める友人を訪ねた。
 担当地域に含まれている陸前高田に仕事の合間に車で連れて行ってもらった。見渡す限りの空き地にうず高く積まれた廃材や鉄筋。何度もニュースで見た陸前高田市役所もあった。
 大きな被害があった施設では捜索終了の紙が貼ってあり、線香が立てられている。手付かずにすべてが止まっているかのような状態だ。
 合掌せずにいられない。ここでお互いに命を救い合おうと懸命に努力をしたのだろう。さまざまなものを飲み込んで真っ黒になった海水に逃げ惑いながら‥。どれだけ怖かったのだろう。自然と涙があふれてくる。
 最近、震災関連の報道が少なくなった。しかし、復興が進んでいるのかといえばそうではなく、スタートラインに立てたのかすら疑問に思う。
 あの震災から1年4カ月。震災の爪跡はまだ生々しい。
 友人の話によると、津波で壊れた施設を広島の原爆ドームのようにそのまま残すか、慰霊碑を建てるかという話も持ち上がっているという。整備された場所に建つ慰霊碑がいいのか、悲しい思い出を宿すがれきを残すのか。そんな問題にも後々は直面していかざるを得ない。
 慰霊碑というと、バリ島で2002年に起こった爆弾テロの慰霊碑を思い出す。バリの爆心地にきれいな慰霊碑が建って10月12日にキャンドルを灯す。忘れないという意味では有効だが、その時期住んでいた私は現実のひどさを知っている。本当に伝えたいことはありのままの姿なのだ。
 東京から2時間と少し。電車に乗るだけで、写真が、報道が、現実となって焦点を結んでいく。自分の立っている場所で今、何かが起こったら、それが現実。そんなことを思ったら震災は他人事ではなく、自分の問題とリアルに思えてくる。もっと視野を広げたら世界の問題だって自分の問題になるのではないのか。空の下はつながっているのだから‥。
 実際に自分の目で見て経験するのが一番確実だ。もちろん全部というわけにはいかない。しかし、自分が知りたいこと、やりたいことなど、そのままにしておかず一つでもいいからやってみるっていうことは大事なのではないか。そこでは人の情報や報道ではなく自分の感性が一番信じられることに気付かされるからである。(じゃかるた新聞元営業部員・三浦朋美)

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