【火焔樹】 Kポップと食文化
某スーパーマーケットのお客様の声のコーナーに「日本のスーパーなのにどうしてKポップを流しているのか」というメッセージを見かけた。即刻やめてほしいとつづられていた。
確かに、貴重な日本食を物色しながらその日の夕飯の献立に思いを馳せている時に、懐かしい日本の曲が聞こえてくれば、それだけで日々のストレスも解消できるだろうし、異国の地にて買い物をすることが楽しみの一つになることは十分共感するに値する。
なので、これをよく言われるジャパンとコリアの溝などと大げさな解釈をするつもりは毛頭ないが、21世紀も10年が過ぎ、今では日本の多くのファンが韓流スターを追いかけて韓国まで押しかける時代である。
一方、ジャカルタでもKポップは多くのファンを獲得し、その人気はとても高い。そして、スーパーにやってくるのは日本人のみならず現地の人や韓国の人も多く見かける。だからそんな堅いことは言わずに、Kポップが流れていれば「今晩は『チゲ鍋』を作ってみよう」といったような、柔軟な発想が買い物をもっと楽しくさせてくれると思うのだが‥。
海外で長く暮らしていける秘訣の一つは、土地の食べ物を好んで美味しく食べられることだと思う。今の日本は、世界の料理が食べられるまれな国の一つとして挙げられるほど、いろんな食材や国のレストランがあり、世界で日本人が暮らしていける下地を日本にいながら知らず知らずのうちに作りあげているかのごとくである。
そこで、スーパーにやってくる日本人が好みそうなインドネシア料理をお惣菜の一つとして店の一角に置いてみても良いのではないか。一羽の鳥に香辛料をふんだんに使って香ばしく焼き上げる「アヤムパンガン(ayam pangan)」や「ラブシアム(labusiam)」と呼ばれるひょうたんを一回り小さくしたような緑色の大根の一種をさっと湯がいたものはどうだろう‥。
今日の晩御飯は、アヤムパンガンにキムチを沿え、ラブシアムに日本の味噌をつけてみようか。やっぱり、豆腐の味噌汁も欠かせない。その前にビンタンビールをグッと一杯。食をそそられるのは私だけだろうか‥。(会社役員・芦田洸)