森林火災予防で協力 気候変動対策に向け JICA
国際協力機構(JICA)はこのほど、インドネシア政府への技術協力となる「森林土地火災予防のためのコミュニティ運動プログラム実施体制強化プロジェクト」について署名した。インドネシア側から環境林業省気候変動総局のアグス局長、日本側からはJICAインドネシア事務所の安井毅裕所長が出席し、署名式典に臨んだ。
25年間にわたりJICAが実施してきた協力の成果を生かし、泥炭が広範囲に分布するリアウ、西カリマンタン、中部カリマンタンの3州をモデルとし、地域コミュニティーと連携しながら森林火災発生の予防・対策を実施していく。
インドネシアは、世界第3位の熱帯林面積を有しており、野焼きなどを理由とした森林火災に長らく悩まされてきた。2015年には極度に乾燥した森林・泥炭地で大規模火災が広がり、煙霧(ヘイズ)が発生し、呼吸器疾患患者が多く出た。航空機の運行障害や欠航、近隣諸国への越境被害をもたらすなど、大問題に発展した。
JICAは1996年から2009年まで、3つのフェーズで森林火災対策に向けた技術協力を継続してきた。さらに09年から5年間のプロジェクトでは、地域住民を巻き込んだ森林・土地火災予防メカニズムの構築に貢献した。
消防隊員や住民などから構成されるチームが展開した活動は、村落住民による野焼きの減少につながった。消防隊の指導者研修に使ったカリキュラムとシラバスが、インドネシアの公式な研修カリキュラム・シラバスとして認められるなど、防災に向けて目に見える実績も生まれた。
近年は従来以上に森林・泥炭地火災を含む森林減少など、諸問題解決への圧力が高まっている。気候変動対策を念頭にした火災による二酸化炭素発生の防止や煙害の抑制に向けた対策が喫緊の課題となっている。
今回の協力では、前回実施のプロジェクトのようにコミュニティー活動を基盤としながら、泥炭水位管理や代替農業の提案など野焼きを行わなくても住民が持続的に生計を立てられるようなあり方も探る。