戦略的な採用計画が鍵 ニッコーバリ・長谷部昌也氏 観光業に光
バリ州では2月から、日本やシンガポールなどから外国人観光客の受け入れが再開。コロナ禍で約2年間、大打撃を受け続けた観光業に新たな兆し見えた。現地に期待感が広がる中、ホテル・ニッコー・バリベノアビーチ(同州バドゥン県)の長谷部昌也総支配人にホテルの状況や今後について聞いた。
コロナ禍前のニッコー・バリでは宿泊客の6割がオーストラリアや中国から訪れる外国人観光客だった。じゃかるた新聞の取材に長谷部氏は2月24日、「現在は国内客が9割を占めている」と語った。
政府は昨年10月、バリ州で外国人観光客の受け入れ再開を決定。ただ、海外からの離発着便はなく、観光業従事者に大きな失望を与えた。
長谷部氏は「2月から日本やシンガポールからの便の運行がようやく始まった。3月からはオーストラリアやオランダからの便が再開すると言われている」とし、先が見通せない昨年の状況とは違う、新たな可能性に期待感を示した。
今年はまた、バリ州では10月に20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催される。これを好機ととらえてニッコー・バリでは、オンライン会議用のカメラ、スピーカーなどを準備することで、メディアの受け入れも進めていくという。
一方、今後、見込まれる観光客の増加に備え、新たなスタッフを確保する必要もあると長谷部氏は考えている。
「コロナ禍でスタッフの数が大幅に減った。優秀なスタッフほど海外に出て行ってしまい、地元に帰ってしまったスタッフも再び観光業に従事するとは限らない」
ホテル業を復興させる難しさを語る長谷部氏は、「観光業に明るい兆しが見えるものの、先が読めない状況は変わらない。今後はスタッフの戦略的な採用計画が重要な鍵となる」と強調した。
ニッコー・バリでは観光客受け入れ体制を整えるため、新型コロナウイルスのワクチン接種でホテル全従業員にブースター接種を実施してきた。
長谷部氏は「オンラインでパスポート、ワクチン接種、住所のデータ登録。宿泊当日はルームキーを受け取るだけにするなど、非接触サービスを拡充していきたい」という。
足元ではヨーロッパ各国からの問い合わせが増加。長期滞在客の増加に期待する長谷部氏は、「今後は持続可能な開発目標(SDGs)の一環として、省エネのプール循環浄化装置やソーラーパネルの導入も検討している。ヨーロッパマーケットではサステナビリティの取り組みも重要になってくる」と策を練る。(バリ=長田陸、写真も)