武道の精神を反映 開校10周年(下) 教員の役割に思いを巡らす
「礼に始まり礼に終わる」。バンテン州南タンゲラン市で合気道三段の腕前を持つ、教育法人ヤヤサン・スマラクのファディル・ハシム代表は日本で武道の精神を学んだ。同市で貧困地域の教育を支えようと設立されたヒカリ小学校。その創設者の1人となるファディル氏は、学校生活に武道の精神や日本の道徳教育を取り入れている。
武道の試合においては作法を守り、相手への敬意を示すことが何よりも大切だ。武道の精神が教育にも活かせるとファディル氏は考えた。「それだけではない。間違ったらすぐに謝る。人を許す気持ちを持つ。言い訳をしない。小さなことでも感謝する」。ファディル氏は心豊かに生きる子どもの育成を目指す。
校内には時計塔が設置されている。ファディル氏とヒカリ小学校を設立した富山県富山市の一般社団法人インドネシア教育振興会(IEPF)の窪木靖信代表理事は「時間を守る大人になって欲しい」と語る。
「インドネシアには時間が厳守されないという意味の『ジャムカレット(ゴムの時間)』という言葉がある。だが、園児児童には常に時計を見ることで小さい時から時間の管理ができる人になって欲しい」
ヒカリ小学校では教員の育成にも力を入れる。ファディル氏は「学習のデジタル化を進める。教員が作った教材をYouTube(動画投稿サイト)に投稿させている」。投稿された教材を基に他校の教員と交流。意見を交換することで国内の教育の質が高まることを期待する。
今後は学校の設備拡充を目指す。窪木氏は「理科室と図書館の新設。コンピューター室と保健室の拡大。教育の質をより充実させたい」と意気込む。
貧困地域の教育を支援するヒカリ小学校。地球を守る環境教育を取り入れ、コロナ禍前は日本から大学教授を招くなど日イ交流の場ともなっている。「子どもにチャンスを与えたい」。窪木氏とファディル氏の挑戦は続く。(長田陸、写真も、おわり)