「若き英雄」が利かす機転

 独立記念日の朝、モナス(独立記念塔)に向かった。昨年に続いて祝賀式典はオンライン。それでも祝意を少しでも共有しようと、多くの人々が集まってきた。
 陣取ったモナスの南側ゲートは、正面にモナスがそびえ、左奥は政府主催の祝賀式典が開かれているイスタナ(大統領宮殿)。耳を澄ませば儀じょう隊の礼砲も聞こえた。式典が始まると、通りすがりの車やオートバイが続々と違法駐車を始めた。
 「路上駐車はダメ。オートバイは歩道を上がらないように」
 交通整理をする警備隊3人は声を枯らして、近くの駐車場に誘導しようとするが、流れは止まらない。見守っていると、誘導指示は「駐停車禁止」から「写真を撮るなら短時間で」に変わった。なんともこの国らしい柔軟な対応だ。彼らの職務はさておき、少なくとも現場は誰も困っておらず、混乱もない。
 感心していると、最も若い警備隊がさらに機転を利かせた。撮影に時間がかかる子ども連れの家族に近づき「撮りましょうか?」。なんと。またも職務から逸脱するが、問題解決には早道だ。しかも子どもたちにとってこの日の家族写真は、忘れ得ぬ思い出になろう。
 これを近くで見ていたイブイブたち(ご婦人方)が見逃すはずがない。「キャー、この人は英雄よ」。彼を取り囲み、記念写真を撮りだした=写真。あの角度、この角度。どうせなら動画でも、と。
 なんとも微笑ましい光景だが、イブイブたちが彼を独占した結果、混乱は広がった。それでも記念式典が終わると、引き潮のように人々は去る。あっという間にゲート前には元の静寂が戻った。この国特有のバランス感覚。時として閉口することもあるが、憎めない。(じゃかるた新聞=長谷川周人)
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