信じる事の大切さ
「急いでいる時に限って」。よくある話だ。タクシーが来ない。キーマンと連絡が取れない。探し物が見つからない、などなど。その日もそうだった。朝、時間を切られた約束があり、前夜から用意周到だったはずだが、いざ出発しようと車に乗り込むと、警備員が声をかけてきた。
「前輪がパンクしている」。万事休す。頭の中で時間の計算をしたが、どうあがいても間に合わない。警備員に事情を話すと、彼は無言で電話に手を伸ばした。日曜日の早朝、パンク修理ができる店を探し始めたのだ。
一方、私は社有車の管理者と連絡を取った。彼の判断も早かった。「その車は放置。別の運転手にピックアップさせ、自分は代車を持って行く」。なるほど、ありがたい。問題は時間だ。
と思うのも、つかの間、警備員は「バイクで先導するから、ゆっくりついてきてくれ」とせかす。懸命な努力が嬉しく、彼に賭けることに。ダメなら、代車を修理屋に回すこともできる。ところが、修理屋にはすでに先客が3人。もう無理だと思った。
が、警備員は諦めない。みんなに事情を説明すると、誰も嫌な顔ひとつせず、快く順番を譲ってくれた。修理屋の主人も勝負に出た。時間短縮のため、ジャッキは使わないという。不安そうな私を案じてか、「大丈夫。こっちはプロだよ」とニッコリ。作業にとりかかった。
パンクした場所を特定し、穴を広げて修理材を埋め込む。素早かった。さらに車を動かし、別の穴がないか確認。大丈夫だった。修理時間は15分。特別料金もなく、修理代は2万5千ルピアだという。
パンク確認からここまで35分。緊急行動制限のおかげで道路は空いており、約束の場所に到着したのは予定より12分遅れと大事にはいたらなかった。まさに神業的な警備員に始まる連携プレーに感謝の言葉がみつからない。
対応の遅さや甘さに苛立つこともあるが、やはり信じて待つことも必要だ。気持ちが通じ合ってこそ、湧き出る知恵や力が日イ間にはきっとある。改めてそう思った。(じゃかるた新聞=長谷川周人)
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