統一時間 10月導入へ 「20%分の経済効果」 ASEAN統合にらみ
西部、中部、東部の三つの時間帯を統一する案が具体化し始めた。経済開発加速・拡大委員会(KP3EI、委員長・ユドヨノ大統領、執行委員長・ハッタ・ラジャサ経済担当調整相)のエディブ・ムスリム報道官は二十五日、十月二十八日をめどに全国統一時間を導入する方針を表明。ハッタ・ラジャサ経済担当調整相は「大統領はすでにゴーサインを出している。実現によるデメリットよりもメリットの方が大きい」としており、国民への周知と合わせ、今後、さまざまな分野で導入に向けた準備を進めていく意向だ。
経済担当調整相事務所のルキー・エコ・ウルヤント・インフラ担当次官は、来月から関係各局が導入に向け動き出すと明らかにした。
実現すれば、ジャカルタでは日本との時差が一時間に縮まるため、日系企業では、本社に連絡できる時間が拡大することになる。
統一時間の導入は、二〇一五年のASEAN(東南アジア諸国連合)経済共同体設立へ向けた施策の一環で、政府は、西部、中部、東部の三つを中部時間に統合することで、他国、国内での取引を活発化させたい考え。当初、八月十七日の実施が検討されていたが、イドゥル・フィトリ(断食明け大祭)が十九―二十日となることが見込まれているため、混乱が予想されるとして、インドネシアの民族意識の確立の契機となった「青年の誓い」から八十四周年となる十月二十八日に実施日を延長した。
エディブ報道官は「二十八日は日曜日のため、平日よりも導入による混乱は少なくなるだろう」と説明。「統一時間の導入により、長期的にはGDP(国内総生産)を二〇%高める効果がある」と強気の姿勢を見せた。
同案では、英国のグリニッジ標準時(GMT)に八時間先行する「GMT+8」に合わせることになる。GMT+8は、香港、台湾、シンガポールをはじめとするアジア金融の中心都市のほか、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、豪州(西部)を含む総人口十五億人の巨大マーケット。
統一時間の実現による効果の一つとして、株式市場での取引が一日当たり五千億ルピア、一年で百兆ルピア増加することを見込んでいる。
■「国民の理解必要」
一方、導入の慎重論も根強い。ユスフ・カラ前副大統領は「ニューヨークとロンドンは五時間の時差があるが、それが成長の障害になっているということはない」と語り、安易な統合案に釘を刺した。
民間シンクタンクの経済金融開発研究所(INDEF)のエニー・スリ・ハルタティ所長は「国民の理解が得られていない。もう一度しっかり検討し直す必要があるだろう」と慎重に対処する必要があるとの考えを示した。