「日本人と心つながる」 中部ジャワのシンギーさん  手を携え持続可能な発展を

 「自然との共生。環境に負荷を与えない文化生活こそ、人類が目指すべき方向ではないか」。中部ジャワ州の片隅から、こう問いかける工学エンジニアがいる。シンギー・カルトノさん(52)。村おこしを目的に開発した竹製自転車で日本の「2018年グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)」を受賞した。だが、「自転車はあくまで活動のシンボル。日本は市場としてみていない」。ならば、なぜ日本に思いを寄せるのか。竹林に囲まれた彼の生まれ故郷で話を聞いた。 
 シンギーさんは中部ジャワ州テマングン県に生まれた。主要産業は葉タバコなどの農業。センドロ山とスンビン山に挟まれ、開発の波に取り残された山間の村だった。家庭に恵まれたシンギーさんは、ここからバンドン工科大学(ITB)に進み、工学エンジニアとしてエリートコースを踏み出そうとする。
 「ジャカルタで大企業に就職して安定収入を得る。ご多分にもれず、在学中はそんな自分の将来像を思い描いていた。だが、故郷を見渡せば若者が都会に出て行き、村は活気を失うばかり。何か、違う。卒業論文の準備に追われながら、思い悩む日々が続いた」
 そんな時に出会ったのがITBの元教授で彫刻家のソリア・プルナワ先生。手作りにこだわるバリ島出身の彼との出会いは、シンギーさんにとって人生の分水嶺となる。
 「工業化の道をひた走る18世紀の欧州は、産業革命を経て近代に入る。世界は物質主義に飲み込まれ、自然を破壊してきた。その先に見出すべきは自然界とバランスした共存関係だが、21世紀の今も成し遂げていない」
 持続可能な開発の必要性を熱く語るシンギーさんは、村に自生する再生可能資源のバンブーで自転車を製作。この国際ブランド化で村民の意識改革を呼び起こし、三つの価値観の大切さを世界に向け発信する。3つの価値観とは「持続可能、自立、創造的」。「物質至上主義にピリオドを打ち、豊かさの本質を追求しよう」と呼びかける。
 そのシンギーさんが海外の活動拠点に日本を選んだのは、「欧米も韓国も歩いたが、日本人となら心と心がつながると確信した」から。山口県山口市の阿東地区で暮らした経験では「譲り合い、年上を敬う日本社会にジャワと共通する価値観を感じた。伝統を重んじ、新しい文化を取り入れる日本人の工業製品には、その魂を感じる」。(長谷川周人、写真も)

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