バリ王族に嫁ぎ30年 ケイコ・マンデラさん 外務大臣表彰受賞
外務大臣表彰の今年度受賞者が1日に発表され、インドネシアでは唯一の日本人受賞者となったケイコ・マンデラさん。日本の大学に在学中、ケイコさんはボロブドゥール遺跡の修復作業の関わり、これがきっかけとなってインドネシアに足を運ぶようになった。そこでバリ伝統舞踊を世界に広めたバリのマンデラ家と交流を深め、30年ほど前に嫁いだ。
「もともとフランスの煌びやかな芸術に憧れていた」というケイコさんは、当初、東南アジアに馴染めるか不安を感じていた。しかし、いざ住んでみると伝統儀式やバリ特有の思想に惹かれたという。
マンデラ家は19世紀、オランダが領主という形で残した王朝の一つで、「ヒンドゥー教に基づいた王侯貴族階級」にあたるという。バリ島を代表する歌舞団のプリアタンなど、複数のガムランや舞踊グループを持つ芸術に溢れた環境の中、ケイコさんは長年、踊り子たちをモデルに絵画の制作を行っている。
日本でもバリ舞踊や絵画の魅力を伝えるため展示会を開いてきた。毎回、息子や踊り子と訪れ、展示会では舞踊も披露させるという。すると彼らはそこで「日本文化やマナーを吸収し、バリを客観的に捉え、成長する」。こうした文化交流の促進が外務大臣表彰受賞へとつながった。
芸術家であるかたわら、ケイコ氏はバリで3つのホテルのマーケティングマネージャーも勤めている。
今年はコロナ禍で7月までホテルを閉鎖せざるをえなかったという。しかし「どのような変化も受け入れ、むしろ強みにしていく」というバリの思想に倣い、経営の仕方も変えた。より衛生的なサービスを心がけて従業員を教育し、客層のターゲットを国内観光客にしぼり、手頃な価格での宿泊やランチを提供。ヒンドゥーの寺を持つホテル内にムショラ(ムスリムの礼拝室)を設置するなどの工夫もした。
経費削減のため、料理の食材をバリ産に限定したところ、予想以上においしく、「このような状況すら前向きに捉えている」とケイコさんは話す。その根幹には、現地の住民である従業員と助け合って家や村を守り、彼らにとって欠かせない宗教儀式を共に継続していきたいという思いがあった。
プリアタン歌舞団の活動にも変化があった。観光客の前で上演することが難しい現在、オンラインで舞踊教室などを開催している。
伝統や芸術を絶やさないために、新しいことを積極的に取り入れながら広めていく。受賞についてケイコさんは、「輝かしい賞をいただき光栄に思う。支えてきてくれた家族や仲間に心より感謝の言葉を伝えたい」と喜びを表した。(三好由華)