絆、次世代へつなぐ 福祉友の会 残留日本兵資料館設立へ
第二次世界大戦時にインドネシアに駐留し、敗戦後も独立戦争を戦った残留日本兵の子孫らで組織した「福祉友の会」は9日、南ジャカルタ・テベットにある同会事務所で、残留日本兵の軌跡を記録する資料館の開設に動き出す決意表明を行った。会合には在インドネシア日本大使館の石井正文大使のほか、2~4世代の子孫たちも加わり、日イを結ぶ絆を次世代につないだ。
開設準備が始まる「残留日本兵資料館」は、同会の事務所を改装して設置される予定で、残留日本兵の生き様を記録した写真や手紙、証言映像などをデジタル化して保存。データベース化にも進め、作業に必要なスキャナーを贈呈したインドネシア・エプソン・インダストリーの阿部栄一社長によると、「写真だけでも3500枚はある」という。
資料館設立の意義について、同会会長で発案者でもある2世のヘル・サントソ衛藤さんは、「残留日本兵の記録を形にして残すことで、2世以降が日本人としてのアイデンティティを受け継ぐ一助になるはず。これが私たちのルーツであり、将来に向けた架け橋となるようにしたい」とした。
会合では、「Zoom(ズーム)」で参加したメダンのイワイ・ケン支部長が、「日本の文化や言語を次世代に伝えていく」必要性を訴え、プロジェクトが「次世代の日本への留学や就職にもつながるよう願っている」と話した。
また東ジャワとバリの支部長を兼ねるイシイ・スリヤントさんは、「独立戦争に貢献した第1世代は私たちの誇り。資料館はその彼らの功績を残すものだ」と話し、プロジェクトの始動を喜んだ。
これを受けて石井大使は、「第1世代がやったことは、正しく評価されるべき。資料館によって次世代のネットワークが広がることはすばらしい」と歓迎した。また同会に向け、「インドネシア人であると同時に、日本のルーツを持つ2世3世には、日本とインドネシアの架け橋になる資格と力がある」と伝えた。
会合の最後に3世の会員が、「真実を伝え続ける場としての資料館の設立に向け、心を1つにする」とする〝決意書〟を日本語で読み上げ、石井大使に手渡した。
会合終了後、日系3世で23歳のタナカ・シゲコさんは、プロジェクトや同会の活動が「両国の関係強化へつながることを期待している」という。2世のタナカ・ヨシコさんは、「3世以降が自分の祖先を知り、理解し、敬うことを望む」と訴えた。
資料館は20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、インドネシアが議長国となる2022年のオープンを目指す。翌年は日本とインドネシアの国交樹立65周年。同会は要人往来の活発化が予想されるこの時期、資料館が注目されることに期待を寄せている。(三好由華)