「本当に陰性なの?」 突然の退院通告
午前7時。愛想の良い看護師が片言の日本語を話しながら入室してきた。血圧と体温の測定。そして問診を行う。ただ、その直後に別の看護師が改めて測定と問診をするという。さっきの看護師はいったい……。インドネシア特有の〝おもてなし〟と理解しておこう。孤独感が増す中、久しぶりに聞く母国語は嬉しかったのだから。続けて朝食が運ばれた。
午前10時半。前日の支払いのやりとりで、ワッツアップと電話では請求額に相違があることに気付いた。そこで内訳を確認すると、救急処置や検査の費用が加算されたという。どうやら病院側で情報が一貫されていないようだ。対応した相手にしつこく名前を聞くが、はぐらかされてしまった。ただ、所属機関から連絡が入り、病院の経理部長と掛け合った結果、デポジットは例外的に免除され、その他は退院時の支払いが可能になったという。まずは感謝だが、ころころと変わる対応に少々疲れた。
午後7時。夕食時にお茶を頼むと、紙コップ入りの甘いジャワティーが運ばれ、さらに看護師は甘い物が欲しいならクッキーなどの用意があるという。コーヒーは何度頼んでも栄養科が許可しないが、甘いものは積極的に勧められた。
ちなみに、朝食は炭水化物(ハンバーガー・ご飯)とタンパク質(肉や魚のフライ、卵、テンペ)がメーンで、お菓子類が付く。昼食はご飯、野菜炒めや煮物、肉か魚かテンペ、フルーツ、揚げ物。夕飯は、ご飯、野菜、肉か魚などと、フルーツとなる。
某日午前7時半。いつもの朝の検診。看護師の防護服に付着した血の跡が気になる。それにしても、贅沢を言えるなら無糖のコーヒー牛乳が飲みたい。
午後1時15分。入院から2度目のPCR検査が行われた。鼻の粘液採取と、喉の粘液は2回採取した。ここでもし陽性ならまた振り出しに戻ると考えると、気持ちが落ち込んだ。孤独と退屈で早く帰りたいという気持ちが強くなってきた。
某日午後4時。入院時に担当した医師による聴診器での診察と問診。前日のPCR検査で陰性なら、退院できると説明された。そして同じ日の午後10時、ナースコールが鳴り、突然退院できると伝えられた。検査結果まで長くて4日と聞いており、1日で出たことに驚いた。本当に陰性なの? あまりの早さに疑ってしまい、ワッツアップで結果を送るよう頼むと、翌日対応になるという。とにかく退院できると知り、気持ちが晴れた。
退院日の午前6時。念のために看護師に退院の可否を確認したが、問題ない。退院だった。しかも、保険会社からの連絡によると、今回の費用が全面的に保険適用されるという。物事が一気に動き出した。
午後4時。車椅子が用意された。6日間の入院生活もこれで終わる。看護師の案内で1階に移動し、検査結果などの書類が入った茶封筒を受け取り、出口まで見送られた。
まだ明るく、歩いて帰宅することに。長らく外出を控えていたため知らなかったが、夕方の駅前は思ったより人通りが多く感じた。「大規模社会的制限(PSBB)」開始以前のような雰囲気に戻りつつあるようだ。=おわり (長谷川周人)