仕分けを「海外輸出」 地方代表議会議員「時間かけ導入検討」 構想日本 加藤氏ら講演 JICA共催で研修会
地方代表議会(DPD)は十六日、日本各地で行政の事業仕分けに携わってきた民間政策シンクタンク「構想日本」の加藤秀樹代表ら五人を講師に、事業仕分けの意義や手法について学ぶ研修会を行った。国際協力機構(JICA)と共催で行われた研修会は、国会(DPR)への監視機能強化を目的に、JICAの能力開発研修で昨年二月に訪日し、事業仕分けの説明を受けたDPD議員が発起人となって企画した。日本の中央レベルでは二〇〇九年に民主党政権下の行政刷新会議で取り入れられ注目を浴びた事業仕分けの研修会は、海外で初めて。国会が議決する法案の審議への参加は認められているが議決権はなく、機能や権限が限定的となっている地方代表議会は、今回の研修会からヒントを得て、存在感を高めたい考えだ。
研修会には、DPD議員や各州の州知事、中央省庁の職員、大学の有識者ら約三百七十人が参加した。加藤代表ら五人が講師となり、行政運営の課題を見つけるために「公開」「外部の視点」を柱とした事業仕分けの概念や手法、成果について説明。住民への情報開示、第三者の参加は民主主義の基本であると強調した。実績として、十年間で関わった仕分け事業が約百四十回に上ることや、〇九年の民主党政権下で行われた事業仕分けに対する国民の支持率が八〇%に達したことを紹介した。
また、出席者はDPD議場で模擬仕分けを実演し、参加者らは仕分け人として対象事業を評価した。
加藤代表は基調講演で「インドネシアにおいて仕分けを有効に活用し、アジア発の民主主義の手本になってくれればうれしい」と今回の研修会の目的を説明。会を終えて「議員の方はとても熱心で、手応えを感じた。有意義な会だった」と述べた。
研修会の発起人の一人であるラフマット・シャー議員は「例えば、前年の予算を議会や省庁などで検証することで、全体として予算の議論を活発化していくことができる」と強調。一方で、「導入に向けては、ゆっくりと時間を掛けてインドネシア独自の仕分けの手法を確立していきたい」と期待を寄せた。
■理解に時間、疑問符も
講師と議員らがグループごとに分かれて議論を行った中で、事業仕分けへの質問が飛び交った。
事業仕分けの元々の意義は、予算削減ではなく無駄を省く予算編成や適切な配分。日本では景気が低迷する状況で事業仕分けを行う結果として、税金の無駄遣いを削減することも目指した。一方、インドネシアの経済は好調で予算も年々増加。事業仕分けについて初めて説明を受ける議員たちにとってはすぐに仕組みを理解することが難しいこともあってか、参加者からは「今のインドネシアで予算を削減する必要はない」との声も上がった。
また、「日本の事業仕分けをインドネシアに導入するのは無理がある」と、民主主義の成熟度や国土、文化の違いから難しさを指摘する参加者も。仕分け人となる人材の不足や、仕分けを行うことにより新たな汚職が生まれるのではないかとの懸念を指摘する議員もいた。
◇地方代表議会(DPD)
二〇〇一年の憲法改正で新たに設置。議員を各州から直接選挙で選出する。主な機能と権限は、国会(DPR)に対して地方自治関連法案を提案することや、国会における地方自治関連法案の審議に参加すること、国会が審議する法案に対して意見を表明すること、地方自治関連法や国家予算などに関する法律の実施を監督し、国会に評価結果の提出と提言を行うことなど。