急伸のEC市場 コロナで弾み 利用者約1.7億人 中国系大手も参戦
急伸するネットショップなどの「電子商取引(EC)市場」が、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、市民生活にも浸透してきた。「大規模社会的制限(PSBB)」などの実施で外出ができず、一般消費者がその利便性を実感したためだ。中央統計局(BPS)によれば、今年3月のオンライン販売取引は今年1月と比べて320%増、4月には480%増を記録。食品などの生活必需品が売り上げの多くを占め、市民の消費スタイルが大きく変わろうとしている。
地元メディアによると、インドネシアのEC市場は東南アジアトップの成長率を見せており、規模は2019年で210億ドル、ECサイト利用者数は1億6830万人と国民の半数を上回る。グーグルの調査では今後も成長が見込まれ、25年には530億ドルに拡大すると予想されるという。
EC市場への企業参入を見ると、昨年は訪問者数がトップとなった「トコペディア」のほか、ECアプリのダウンロード数が国内1位の「ショッピー」など東南アジア系企業が際立ってきた。
ここに中国EC大手の「アリババ」が買収した「ラザダ」、同じく中国大手「京東(JD.com)」の子会社で無人スーパーを展開する「JD・ID」など中国資本の参入も加わり、大企業がしのぎを削る。
市場拡大が期待される理由の一つは、サービスの未開拓地が国内に残されている事。このため大手各社のシェア拡大に向けた戦略は、物流インフラの拡充による地方消費者へのリーチの強化となる。
地域によって配送サービスの対象外であったり、到着に時間がかかる場合があり、6都市に11の配送拠点を持つJD・IDは今後倉庫の増設で地方顧客の取り込みを狙う。
その一方、急成長の過程で問題も浮上している。消費者の個人情報保護は運営者側の義務だが、トコペディアは今年3月、9100万人分の顧客情報が不正アクセスされるなど、セキュリティシステムの脆弱性が浮き彫りになった。
地元メディアは、コロナ不況にあえぐ中小規模の小売業者は、オンラインプラットフォームの活用などの対応をしない限り、コロナ収束後、ビジネスを軌道に乗せることはできないだろうと伝えている。(久吉桂史)