遠隔医療に何ができるか

 新型コロナウィルスの感染拡大で診療所が軒並み閉鎖。院内感染を避けようと外来患者を拒むケースもあった。そこで行き場を失った患者が頼ったのは遠隔医療。医師との対面診療ではなく、電子通信技術を駆使したオンライン医療が、生活を支える新たな選択肢として急成長している。
 新型コロナで医療現場が大きく変化する中、この数カ月で頭角を現したインドネシアのオンライン医療スタートアップ「ハロドッグ(Halodoc)」。国内全域で患者が医師とチャットやビデオ通話で医療相談を受けられるデジタルヘルスケア・プラットフォームだ。
 急伸した背景には、保健省と協力関係を結んだほか、配車アプリ大手との協業で遠隔地でもコロナウイルスの迅速診断を可能にしたことなどがありそうだ。例えばジャカルタ特別州にPCR検査を受けるべき患者がいて、州内の医療機関が対応できなくても、ハロドックを介し、西ジャワ州カラワン県内にある20の病院で検査予約ができるという具合だ。
 ジャカルタ市内の自動車ローン会社に勤めるアリフ・プトラント(37)も、遠隔医療サービスを利用し始めた一人。「システムがイメージできず最初は消極的だったが、医療費は勤め先が負担するから受けた。急性胃炎で利用したが、結果はとても満足している」という。
 インドネシアではこの数年、遠隔医療サービスに参入する新興企業が林立している。ハロドックのほか、アロドクターや中国の平安健康医療科技の系列下にあるグッドドクター&グラブヘルスなどがそれだ。彼らは遠隔のデジタル診療に加えて処方薬の発行や薬品の配達もするなど、サービス内容は日増しに拡大している。
 こうしたサービスが注目を浴びるようになったきっかけは、やはり新型コロナの感染拡大だ。病床不足、医師不足、あるいは院内感染……。医療現場はこれまでに経験した事がない試練に直面した。しかし、遠隔医療は決して一過性の需要ではなく、コロナ収束後も発展するだろう。
 前出のアリフは、「遠隔医療が『ニューノーマル(新たな日常)』で重要な役割を果たす可能性は高いという。ただ、遠隔医療は「あくまで初期段階において通常医療を補完するもの。対面医療を行う医師にとって代わることはできない」とも話し、脆弱な医療機関の立て直しを怠るべきではないと注文をつけた。(リリス・イラワティ)

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