布マスク2500ルピアで販売開始 88 Spares 日山CEO 「価格破壊」に挑戦
電子商取引で紡績機械パーツを販売する88 Spares(本社・シンガポール)が、インドネシアの大手オンラインショッピングモール、トコペディアで布マスクの販売を開始した。マスクの争奪戦が加熱して価格高騰が続く中、販売価格は1枚2500ルピア。同社の最高責任者(CEO)の日山史巳さんは、中間マージンを排除して生産者と消費者を最短距離で結び、「価格革命を起こしたい」と新たなビジネス形態の構築に挑もうとしている。
同社が販売するマスクは、二重構造の布タイプ。バンドン県にあるラインですでに生産が完了している11万枚のうち、社会貢献活動にまわる企業向けの6万5千枚が完売。残りを27日からトコペディアでの販売が始まった。
バンドン県にあるアパレル企業経営者と共同で立ち上げたブランドは「Satu Kebaikan(善意の輪を広げていく)」。今後は色のバリエーションを増やすほか、ヒジャブでも着用できるタイプなども生産していくという。
現状の生産能力は月産200万枚まで増産できる体制にあり、当面の需要に応えるために220万枚分の生地を確保した。「10回、20回と洗っても壊れない縫製。薄っぺらなポリエステル製が多く出回る中、日系の大手繊維メーカーの協力も得て、綿とポリエステルの混合した胸を張って出せる生地を使った」(日山氏)。
新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが〝特需〟に沸く中、敢えて低価格帯で販売に踏み切った理由について日山氏は、「強欲な人がいなければ、この価格で十分にマスクはできる。追随する縫製業者もいるだろう。生活必需品に利益を乗せて大もうけする人たちを市場から排除したい」と言い切る。
同社にとってマスク生産は初めての試みであり、「価格破壊は市場改革を目指すための〝序曲〟」。マスク生産の延長上には本業が関わる紡績業界の活性化という狙いもあれば、インドネシア版の「アマゾン・ファッション」の実現による市場拡大という構想もある。
しかし、足下ではコロナショックでマスク市場は混乱を極めており、日山氏は「チャンスがあればすぐにでもコンソーシアムをつくり、まずはインドネシアの人々のため、そして輸出向けも『日本連合』として利益だけではない社会貢献ができたらと思う」と話している。(長谷川周人)