義務教育12年制へ ジャカルタで来年から 州知事が表明 高校授業料も無料に
ジャカルタ特別州のファウジ・ボウォ知事はこのほど、義務教育を現行の九年間から、高校を含めた十二年間に延長するとともに、公立高校の授業料を無料にする考えを示した。来年から段階的に導入し、二〇一五年度中の完全実施を目指す。
十二年制義務教育と高校授業料無料化は、これまでにも各州で検討されていたが、財政難などを理由に実施は見送られていた。実現すれば、全国に先駆けた取り組みとなる。
現行の義務教育は小学校(六年)、中学校(三年)の計九年間。児童・生徒数に応じ、各州が各公立小中学校に分配する教育運営費(BOP)のほか、教育文化省が学校運営補助金(BOS)を支出することで、児童・生徒側の授業料負担をなくしている。
ジャカルタ特別州は今後、教育運営費の対象を公立高校にも拡大し、一五年までに州内の全公立高校に配分する。私立小中学校にも、公立学校と同額(児童・生徒一人当たりベース)の補助金を支出する方針。
同州教育局によると、今回の計画に伴い、教育関連の予算は今年の十兆ルピア(約八百七十億円)から、来年には約七〇%増加するという。
ファウジ知事は「国家教育の日」にあたる二日、中央ジャカルタであった記念式典で「九年制義務教育の成功は、高校生にも無料教育を提供する道を作った」と、教育機会の拡大と人材育成強化に向けた意気込みを述べた。
また「すでに州議会から賛同を得ている」とし、近く十二年制義務教育に関する政令を制定する方針を表明した。
■教科書や制服は有料
ただ、義務教育の拡大と高校授業料無料化の実効性については、疑問視する声もある。
現行の義務教育では、授業料は無料とはいえ、教科書や制服など児童・生徒側の負担は全くないわけではない。「施設維持費」名目で寄付金を求める学校も多いのが現状だ。
州内の大学生イルマ・シャハニタさん(二二)によると、公立中学に通う妹は、毎月学校に寄付金約十七万ルピアを納めている。イルマさんの友人の中には、これら諸費用が重荷となり、中学を退学した同級生もいたという。
イルマさんは「高校授業料無料化と義務教育拡大は歓迎する」としながらも、「授業料以外の費用負担も完全無料にするか、生徒の家庭事情に合わせ、費用負担を猶予するなど、柔軟な対応が必要だ」と注文を付けた。
専門家の間では、不十分な監視体制のまま、財源を増やせば汚職の温床になるとの指摘も挙がっている。
非政府組織(NGO)の汚職監視団(ICW)は一〇年の一年だけで、教育関係の補助金をめぐり、州内で三十三件の横領があったと指摘。会計検査院(BPK)によると同年、公立学校七校で計五十七億ルピア(約四千九百万円)の使途不明金が発覚しているという。