家族のような関係に 日イ合同ワークキャンプ ハンセン病回復村

 村を歩き回ると「モンゴ――(ジャワ語の挨拶)」と声をかけてくれる人たち。毎年8月に日本とインドネシア人学生によって開催されるワークキャンプでの一コマだ。言葉、宗教、ハンセン病を患ったという過去。異なる背景を持ちながらも、「一緒に働く」ということを共有し、11年間日イ交流を続けている村がある。

 東ジャワ州トゥバン県に位置するナンガット村はハンセン病療養所があり、回復村として患者や回復者が数多く住んでいる。この地域は温泉が湧き出ており、古くから温泉を求めて集まったハンセン病患者たちが定住し、療養所が建設された。現在は約200世帯、800人が生活している。
 この村では、日本とインドネシアの大学生が2週間住み込み、村人と交流するワークキャンプが行われており、今年で11年目を迎える。ホームビジットや住環境改善のためのインフラ整備など通して、村人を知り、ハンセン病を科学的に理解。その上で村人と感情的なつながりを持つことで、ハンセン病に対する差別や偏見をなくすことがこの活動の目的だ。
 インドネシアにある他のハンセン病回復村でも同様の活動が行われており、2019年までの累計参加者人数は日本人120人、インドネシア人550人に及ぶ。道路舗装、トイレ・排水溝建設など数多くのインフラ整備が行われたナンガット村には至る所にその証である石碑が設置され、日本人大学生の名も刻まれている。
 ワークキャンプの創設者で、西ジャワ州デポック市に住む髙島雄太さん。サトゥ・ジャラン・ブルサマ財団のプロジェクトコーディネーターとしてこう語る。
 「最初は僕たちの活動を村人は怪しみ、近寄ってこなかった。けれども、回数を重ねていくうちに徐々に理解を示してくれ、インフラ整備の土木作業を手伝ってくれたり、差別を受けた過去から家族のほほえましい話まで話してくれる、まるで家族のような関係になった」
 ワークキャンプによって回復村の生活環境が改善されるにつれ、周辺環境にも変化が現れている。毎年、日本とインドネシアの学生とハンセン病回復者が交流していることを知った周辺住民が、興味を持ち、この村を訪れるようになった。11年前はハンセン病を理由に訪れる人はいなかったが、今では温泉が観光地になり、週末は訪問客で溢れている。
 インドネシアは2000年に国レベルでハンセン病の「制圧(人口1万人当たり患者数が1人未満)」を達成したものの、毎年約1万7000人の新規患者が出ており、ハンセン病の患者数はインド、ブラジルに次いで世界第三位だ。
 治療法が確立している現在、ハンセン病は治る病気であるが、誤った認識が生む差別・偏見は世界全体で依然として根強い。インドネシアも例外ではない。保健省によるとハンセン病に対する差別や偏見は患者の心を閉鎖的にしてしまい、その結果、病気を公にせず、治療を行えない人もいるという。
 ハンセン病患者、回復者にとって心のケアは大切な治療の一つ。同団体は今後もワークキャンプを継続し、村人との交流を深めていくと共に村人たちの就労支援、教育支援などさらに活動を展開させていくという。(伊藤妃渚)

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