シラットに魅せられて ボゴールで腕試し 今日、国際大会出場 (上)

 西ジャワ州ボゴールで28日から始まるインドネシアの伝統武道プンチャック・シラットの国際大会「パクブミ・オープン」に2人の日本人選手が出場する。萩原健さん(24)と久我和也さん(24)だ。日本でのプンチャック・シラットの競技人口は約100人。メジャーとは決して言えないこの競技に2人はどの様に出会い、何に魅せられたのか。その姿を追った。   

 東ジャカルタのタマンミニにあるプンチャックシラットの練習場で27日、萩原さんと久我さんは大会前日の最終調整を行っていた。萩原さんは「型」の完成度を競い合う「トゥンガル」、久我さんは1対1で組手を行う「タンディン」に、それぞれ出場する。
 「なんだこれ。俺もやりたい」。萩原さんはおよそ5年前、大学の研修プログラムで訪れた東ジャワ州マランで、初めてプンチャック・シラットの演舞を見た。滑らかな体の動きと、演舞で使う独特の武具に魅了され、帰国後すぐに日本プンチャック・シラット協会に入門した。
 16年から1年間、南ジャカルタのアトマジャヤ大学に留学しながら、修行に通った。
 「最初の1年は、ひたすら正拳突きの練習」と萩原さんは振り返る。1年ほどで「肩甲骨が開く感覚」を掴むと肩回りが動くようになり、「演舞にも滑らかさが出てきた」と手応えを感じた。
 久我さんは大学まで野球をしていたが、萩原さんに誘われて1年前にプンチャック・シラットを始めた。「『野球以外のこともやってみるか』と軽い気持ちだった」というが、現在は週2~3回練習に参加。さらに海外の大会や合宿に積極的に参加するため、休みを取りやすい就職先を選ぶなど、まさに〝シラット漬け〟の日々を送る。
 久我さんの得意技は「正面蹴り」。当初は野球と大きく異なる動きに大苦戦したが、約6カ月で師範に認められ、国際大会に出場するまで成長した。「力強さと、滑らかな動きを今後も追及したい」と意気込む。

 ■国を超えた友情
 「プンチャック・シラット界に流れる『博愛主義』のようなものにひかれた」と久我さんは話す。19年に中国で参加した演舞会では、日本の観客がおらず孤立無援と思っていたところ、大会中に知り合った他国の選手から声援が巻き起こり、「感極まって半分泣きながら演舞をした」と振り返る。
 萩原さんは「シラットを始め、国籍や宗教の違いを乗り越えた〝家族〟ができた」と話す。今日から始まる今大会では、5年前に萩原さんの前で演舞を披露したインドネシア人選手と対戦することが決まった。「あこがれの選手との対面。緊張と同時にワクワクしている」と目を輝かせた。
 プンチャック・シラットに魅せられた2人の若者が、本場インドネシアで競技に挑む。(つづく)(高地伸幸、写真も)

◇ プンチャック・シラット インドネシアの伝統武道。2019年12月に教育文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、18年に開催されたアジア競技大会から正式種目として取り入れられた。ハリウッド映画、「スターウォーズ」などにプンチャック・シラットの技を磨いたインドネシア人俳優が出演するなど、近年、世界的な広がりを見せている。 

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