「延命」続ける処分場 年々増加、代替地なく 首都のごみ
ガシャン、ガシャン——。おびただしい量のごみを、コマツの重機が積み上げていく。ジャカルタ特別州からごみが運び込まれる西ジャワ州ブカシ市バンタルグバンの最終処分場。収容能力の限界が指摘されながらも、代替地がなく、「延命」を続ける状況がある。
バンタルグバン最終処分場は1989年に開設され、ジャカルタ特別州が運営している。運び込まれるごみの量は、2019年には1日当たり平均7702トンに上った。15〜19年の増加ペースは、年平均320トンになる。
処分場では81・91ヘクタールの土地に35~46メートルのごみ山を作っている。ごみ山の高さは50メートルまでと規定されており、管理当局は、現在のペースで受け入れれば、約2年で収容能力の限界に達すると予測している。
日本の環境省から環境林業省に派遣されている国際協力機構(JICA)専門家の辻景太郎氏は、ごみの分別、リサイクルを行うシステムが十分に整備されていない点や生活者の慣習面などから、ごみの減量は難しいと指摘する。自治体ベースで行われている、リサイクル可能なごみを回収し、換金・再利用する取り組み「ごみ銀行」も削減量としてはわずかだ。
ジャカルタ特別州では現在、代替地の計画は浮上していない。現実問題として同規模の処理場を見つけ出すのは困難で、現状はいかにバンタルグバンの処分場を存続させるかが焦点になっている。
管理当局は場内29ヘクタールを対象に、既存のごみ山を崩し、廃プラスチックをセメント会社に燃料として販売することで、収容スペース確保する取り組みを進める。ただ、この取り組みで得られる処理可能量は「調査中」という。
また政府はごみを焼却して発電する「ごみ発電」を推進している。焼却処理で場内の処理量を減らす。
場内ではごみの焼却、発電施設が昨年設置されたが、焼却可能な量は1日当たり100トンにとどまる。ジャカルタ特別州に焼却量2千トン規模の施設を建設する構想があるが、資金不足が指摘され、先行きは不透明だ。
東アジア・アセアン研究センター(ERIA)の小島道一氏は「ごみ発電は住民からの反対運動で止まってしまう例もある」と指摘。設備面で対策を取りながら軌道に乗せていくことが重要だとしている。
ジャカルタ湾の埋め立ても解決策として考えられるが、環境団体や漁民などからの反対が予想される。首都のごみの行き場をめぐり、模索は続く。(大野航太郎、写真も)