金属労連脱退進む 「政治色強すぎる」 パナソニック・ゴーベル

 パナソニック・マニュファクチャリング・インドネシア(PMI)社を中核とするパナソニック・グループ各社の労働組合は昨年末から、インドネシア金属労連(FSPMI)を脱退する動きを進めている。同労連は、今年初めに西ジャワ州ブカシで最低賃金の大幅引き上げを求める大規模デモを主導し、工場の操業停止を引き起こすなど、一部幹部が過激化することで知られている。長期的な企業の発展が雇用確保や従業員の福祉向上につながるとする労組にとっては、労使協調とは相容れない路線を進む金属労連の方向性に疑問も上がるほか、「一部の幹部の動きがあまりにも政治的。組合員の声が反映されていない」との声も出ており、労働連合組織のあり方に一石を投じることになりそうだ。

 金属総連では、これまで同グループ出身者が幹部を務めるなど、中心的な役割を果たしていたが、昨年末にPMI社などが脱退。今年初めには、脱退した労組がパナソニック・ゴーベル労働組合(SPPG)を立ち上げた。
 同労組のジョコ・ワフユディ議長によると、すでにグループの十四社一財団約四万人のうち、PMI社や現地販売会社のパナソニック・ゴーベル・インドネシア(PGI)社、松下ゴーベル財団など七社・一財団の約四千二百人がSPPGに加入。金属労連とは距離を置き、独自の道を模索している。
 一九九五年から組合活動に参加し、金属労連でも幹部を務めてきたジョコ議長は、FSPMI脱退に至った理由について、「あまりにも政治的な動きが強すぎ、労組員の要望が反映されない。昨年のジャカルタ支部長の選出の際も民主的な選挙が行われなかった」と指摘する。同議長は「脱退により中央・地方政府と公式な場で協議することはできなくなるが、政府もわれわれの動きを支持してくれており、日本のような労使協調路線を進めていきたい」と述べた。
 最終的に最大で三〇%の最低賃金引き上げとなったブカシの最賃騒動が、多くの企業における労使関係をめぐる動きや今後の賃金交渉に影響を与えることが懸念される中、菅沼一郎PMI社社長(兼PGI社社長)は「一部の扇動的な集団が労働組合に影響を与えている。必ずしも労働者側の全員が三〇%の賃上げを正解だったと思っているわけではない」と指摘。「われわれは健全な労組のあり方や労使関係の構築に向け、組合との間で常に話し合いを行っている。植樹イベントもその一環で、労組側から発案があり、経営側が支援する形で実施した。そのような関係の構築に向け、組合を遠ざけるのではなく、一体化する方向を目指していく必要がある」と話す。
 同社の取り組みが一つのアイデアとして、多くの日系企業に波及することで、より円滑な労使関係が醸成され、総体としてインドネシア経済の発展につながっていけばという願いだ。

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