【火焔樹】 「カワイイ」の代名詞
「韓国人の女の子がいるかと思ったよ。それ、かわいいね」「素敵なヘアスタイルね。韓国人みたい」
日本でボブカットにし、パーマをかけて戻ってきた私を見て、インドネシア人の同僚や同じビルで働く顔見知りの女性はそう言って、にっこりほほ笑んでくれた。日本生まれ日本育ちの私としては、非常に複雑な気持ちになった。
以前、方々で「イケメン」と評判の弊紙記者が、売店の女の子に韓国アイドルグループ・スーパージュニアのメンバーの名を引き合いに出され、「ハンサムでそっくり。スジュの歌を歌ってみてよ」と無邪気にせがまれていたのを思い出した。どうやら、インドネシアの若者の間で「韓国人みたい」というのは褒め言葉になっているようだ。
日本語の「カワイイ」は世界に広まったとされている。しかし、「おしゃれ」「かっこいい」「かわいい」の代名詞として浸透したのは「韓国」で、自然な形で大衆化されつつある。クリック一つで公式動画にアクセスできる環境を整え、戦略的にアイドルそのものを国外に派遣するなど、二十世紀末から国を挙げて海外にポップカルチャーを売り出してきた韓国の成果を実感した。
アニメは依然として日本人気が強いし、海外で人気の日本のグループも数多ある。海外市場の可能性に目を閉ざしたままのアイドル事務所がある一方、トップアイドル・AKB48の海外姉妹版をジャカルタに結成するなど、最近になってようやく「クールジャパン」を海外に売り出す動きが本格化してきた。すぐには結果と言えるものが出ないかもしれないが、十数年後、「日本」のイメージがどうなるか、期待したい。(堀田実希)