インドネシア語フリーペーパー 「日本初」発刊、交流フェスも企画 愛知の元実習生団体
インドネシア人の元技能実習生でつくる愛知県豊田市の一般社団法人「TIG(トヨタインドネシアグループ)」が、「日本初」というインドネシア語フリーペーパー「SAHABAT」(サハバット、「親友」の意味)の発行を開始した。名古屋市内で11月下旬には、県内のインドネシア人ら約800人が集まって開かれた文化交流イベント「インドネシアフェスティバル」の運営を手伝った。今後はさらに大規模な交流フェスティバルも企画する予定だ。
インドネシアフェスティバルは、インドネシア留学生協会(PPI)とナゴヤ・インドネシア文化協会(PKIN)が主催し、今回17回目。ガムランの演奏やバリ舞踊、実習生のバンドやダンドゥットなど、約15公演があり、飲食など22ブースも出展した。スタッフを除く近年の来場者は600人規模で、10年前に比べて倍増した。
文化協会の成瀬雅美さんは「年に一度の同窓会気分で、インドネシアの人が参加してくれる。そういう場を提供できているだけでうれしい」と話す。
両協会ともフェスティバルの運営メンバーは限られている。今回は、TIGも会場設営や音響などで手伝った。成瀬さんは「TIGと協力して、協会の活動に新しい風を入れたい」と期待する。
TIGは、元実習生(研修生)で長期の日本在住者が8月に設立。イベント企画、SAHABATの発行を事業にし、今後、新たな在留資格「特定技能」で働くインドネシア人らの支援にも取り組む。
SAHABATは隔月で発行。日イ間の自治体や企業の取り組み、各地の住民グループの活動の記事のほか、同好会やハラル飲食店、日本の祭りのイベント情報を載せる。
TIGのウィジョヨ・セノアジさんは「日本ではインドネシア語で情報が得られる媒体がない。実習生は田舎に住むことが多く、知らない土地で言葉も難しい。休みの日のイベントを伝え、(休憩をして)仕事も楽しんでほしい」と話す。800部を配布し、各地の実習生に送っている。
TIGの代表理事はアフマド・リファイさん(56)。1983年に技術研修で来日した。約4年前、インドネシア人の支援団体「Wasabi」を運営し、災害募金などをしてきた経験を持つ。実習生の支援は、監理団体の元職員らと行い、相談を受けてきた。
「会社がインドネシア人のパスポートを保管している」「殴られた」「残業代が出ない」など、「日本人はあまり知らないと思うけど、問題があるのは事実」と話す。
企業に直接行って、改善策を話し合うこともある。相談は毎月のようにあるが、「(不都合が)見つかると国に帰されると怖がり、隠されて、悩みを言わない子がいる」という。「私たちが日本の文化を知るのは当然だが、日本企業が人手不足の中、私たちが出稼ぎに来る。企業も実習生をパートナーとして扱ってほしい」と話していた。