【リトルインドネシアinアキバ】(3)月額5000円、実は2万円超 インドネシア人実習生 ネット契約、携帯購入に壁
東京・秋葉原の土産店「JSSインターナショナル」の店主アグス・スドラジャットさん(49)がインドネシア人技能実習生らから受ける相談で、ビザや実習内容と並び、多いのは、インターネット契約の問題だ。
「月5400円の契約のはずが、2万4千円も請求が来ました」。毎月のように、契約をめぐる相談が寄せられる。実習先の宿舎で使用するインターネットの契約。実習生同士で割り勘し、月額は低額のはずが、ショップ店員に言われるがままに、オプションを付け、高額になるケースが多い。
アグスさんが確認すると、「インターネットTVとか、いろいろなオプションが付いていて」。最初の1〜2カ月はオプションが無料、オプションを付ければキャッシュバックがある——。そんなキャンペーンを理解しないまま、実習生は申し込んでしまう。オプションを解約しないまま、数カ月、時には半年も高額請求の料金を払い続け、アグスさんに相談に来た実習生もいた。
「みんな店員さんに日本語で言われてわからなくても、『はい』『はい』と返事してしまう」とアグスさんは話す。
携帯電話のトラブルもある。9万円のスマートフォン(スマホ)を買ったが、インドネシアで使えないSIMロックの物を買った人、正規のスマホと勘違いし、偽物を買ってしまった人……。アグスさんや、JSSインターナショナルの日本人の女性店員が電気店に付き添い、契約変更や解約の手続きをサポートする。
携帯電話の解約に行くと、ショップ店員から厳しい言葉を掛けられることも。非正規品を売る店は、短期間で店を閉め、転々と渡り歩いているようだったという。街には安さを売りにしたキャンペーンがあふれている。
支援を受けた実習生たちは、アグスさんの店に顔を見せてくれたり、菓子を持って「ありがとう」と感謝を伝えに来てくれたりする。ネット契約、スマホ購入、保険や病院の相談、ありとあらゆる相談に対応してきたアグスさん。対面だけでなく、入国前からSNSでやりとりする。
店の営業だけでも忙しく見える。なぜ支援を続けるのか。「楽しいからですよ、独りぼっちはさみしいでしょう」。19年前に来日したアグスさん。当初は友人がおらず、「当時、スマホもないから、パソコンで情報を調べて。上野で集まりがあると聞いて行っても、インドネシア人はいなくて。初めてバリ人の男性と話せたとき、うれしかった」。アグスさんは自身の境遇を重ね、店内で笑顔を絶やさず、温かい空間を保っている。
そしてまた一人、店内にアグスさんのお友達が訪れた。すぐ近くに秋葉原モスクをつくった日本人男性だ。(つづく)