高まる「働きたい」の声 座談会サークルで道探る 喪失感に悩む駐在員の妻
フィリピンで働く日本人駐在員の妻たちの間で「私も仕事をしたい」という声が高まっている。現状では査証の関係で比では仕事をできない妻たちが多いが「何か方法はないのか」との声を受け、自らも駐在員の妻である鈴木翔子さん(33)=首都圏タギッグ市在住=が座談会サークル「キャリアアップマニラ」を始めた。
友人らを通じて仲間を集めた座談会スタイルの活動は既に2回行い、約25人が集まった。「今の暮らしに変化を求めている女性が多い」という。
■率直な語り合いから
9月の第1回座談会では、駐在員の妻たちが抱える不安や不満を率直に語り合った。すると「日本では自分でお金を稼いできたのに、比ではそれができなくなった」「夫のお金を使うことに罪悪感を感じる」などの声が多く聞かれた。
鈴木さんによると、日本で続けてきた仕事を失ったことによる「キャリアクライシス」とも呼ばれる喪失感を抱え「鬱(うつ)になる人もいる」という。
第2回座談会では企業向け人材紹介サービスなどを行うジョンクレメンツ・コンサルタンツなどの協力を得て、仕事をするために必要な査証手続きへの知識を深めた。
アジア開発銀行など国際機関の駐在員配偶者には就労可能な査証が発給されている。しかし、一般の企業駐在員の配偶者用の9(g)査証による就労は認められていない。シンガポールなど駐在員配偶者が就労しやすい国もあるが、比の場合は、いったん9(g)査証を取り消し、短期滞在などの査証に切り替えた上で、就労許可証を取得する必要がある。
比滞在4年目の鈴木さんは、日本では製造業の会社で6年働き、生産管理のリーダーも務めていた。夫の比赴任に伴い、仕事を退職したが、いずれ日本で仕事に復帰する予定だ。現在はキャリアアップを考え、育児のかたわら英語を磨き、比の歴史や社会についての講座などに通う。
■それっておかしい
鈴木さんによると「ここ数年、比のみならず、海外駐在員配偶者のソーシャル・ネットワーク上のコミュニティーでは、『働きたい』という声が高まってきている」という。
「駐在員の妻は家にいて夫を支える存在とみなされ、妻が働くことをまったく想定していない会社も多い。でも『それって今の時代、おかしいのでは』という変化が現れている」とも鈴木さんは話す。
11月8日午前9時半からはタギッグ市BGC内で「マニラ・ワーママ体験談」と題した第3回座談会を開催し、首都圏で仕事と家事を両立させているパネリスト3人を招く予定だ。(まにら新聞=岡田薫、写真も)