トラック「ビマ」発売 大統領の肝いり事業 地場自動車SMK
地場自動車メーカー、ソロ・マヌファクトゥル・クレアシ(SMK)は6日、中部ジャワ州ボヨラリ県で自動車工場を開所、ピックアップトラック「ビマ」2種の発売を発表した。同日の式典にはジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が出席し、ソロ市長在任中からの肝いり事業である国産車製造の進展をアピールした。
発売するのはピックアップトラック「ビマ1・2」(排気量1243cc)と「ビマ1・3」(同1298cc)の2種。価格は9500万ルピア(オフザロード)からで、ジャワ島内を中心に販売する。工場の生産能力は年1万2千台という。
2012年、同州ソロ市の職業訓練高校(SMK)と地場キアット・モーター社が乗用車「キアット・エスエムカ」を製造。当時ソロ市長だったジョコウィ氏が公用車に採用すると宣言し、話題を呼んだ。
しかし排気ガス試験で不合格になるなど、事業は難航した。14年には中国の自動車メーカー・北京汽車との提携を発表、開発を進め、スポーツ多目的車(SUV)とピックアップトラックの車両登録を実現したが、普及には至っていない。今回の工場開所で生産、販売の本格化が期待される。
インドネシアではスハルト政権時代に「国民車構想」が立ち上がり、同大統領の3男トミー氏が韓国の起亜自動車とティモール・プトラ社を発足、優遇策が取られたが、アジア通貨危機に直面して立ち消えになった歴史がある。当時の「国民車」は実質的に起亜の自動車がそのまま販売され、同政権のファミリービジネスの象徴とされた。
現在の国内市場は日系ブランドが9割超のシェアを占めている。隣国マレーシアが日系企業との協力で、国産車「プロトン」、「プロドゥア」の普及を進める中、国産車を求める国民感情は依然として高い。
ただ、基幹部品を外国に頼る状況は抜け出せない。同社のエディ・ウィラジャヤ社長は地元メディアに対し、現地調達率は60%ほどで、エンジンなどは中国製だと説明。開示した部品供給元企業の中には東京ラヂエーター製造(本社・神奈川県藤沢市)の合弁企業、東京ラヂエーター・スラマット・スンプルナの名前も挙がった。
SMKは低価格を売りに国内で販売を進める方針だが、ピックアップには日系のダイハツ「グランマックス」や三菱の「トライトン」などがあり、どこまで市場に食い込めるかは不透明だ。(大野航太郎)