山崎さんが文藝春秋に寄稿 警察改革支援を紹介 橋本元首相との秘話も

 インドネシア国家警察長官政策アドバイザー兼国際協力機構(JICA)の同国家警察改革支援プログラム・マネジャーとして、二〇〇一年から二期にわたり、インドネシアの警察支援に携わる山崎裕人さん(日本警察庁警視監)が「わが『インドネシア警察改革』記」を、今月十日に発売された文藝春秋五月号に寄稿した。
 直接関わった一期目(〇一年―〇五年)、二期目(〇九年から現在まで)を含め、支援事業は十年以上経過。最も力を入れ育成を続ける市民警察官は地域に根ざした活動を自主的に展開しつつある。山崎さんは「外に発表しても恥ずかしくない成果が出始めた」と、寄稿文発表を決めたという。
 寄稿文では、九九年秋に、橋本 龍太郎元首相から「(米クリントン政権時のスタンレー・ロス国務次官補との会話の中で)『我が国には、ヤマザキというインドネシアに精通する警察官がいる』と君の名前を出してしまった」との電話があったことを明らかにした。
 橋本元首相は「市民生活の安定化のために、警察改革が重要」として、米側と共通認識を持っていた。
 スハルト政権崩壊直後の当時、警察を軍から分離させる動きが進んでおり、日米などがインドネシアの警察支援を検討。現地警察幹部にも名前が知られ、インドネシア側からも指名があった山崎さんに白羽の矢が立った。
 八八―九一年に一等書記官として、在インドネシア大使館勤務経験があり、カンボジアの国連平和維持活動(PKO)では日本の文民警察の指揮官として、インドネシアの警察幹部とともに汗を流した実績を買われてのことだ。
 山崎さんは赴任後、▽ブカシ警察署をモデルにした技術移転▽若手幹部候補生の日本研修▽警察大学院大学への日本人教官派遣―などをプログラムの柱に据えた。
 物質的支援でははく、人材育成にこだわった活動は徐々に効果を上げ始めた。それまで市民から警察への通報はほとんどなかったというが、地域住民から治安情報を早期にキャッチし、事件の未然防止や早期解決につなげる交番駐在員も相次いで登場。山崎さんは地域との信頼関係構築が進み始めた証左とみる。
 幹部を対象に実施した業務管理の研修も奏功。現場の警察官による活躍をきちんと把握し、評価する仕組みも整いつつあり、士気高揚に大きく寄与しているという。
 十年前に育て、山崎さんと理念を共有する当時の幹部候補生の一部は州警察の副本部長クラスまで昇進した。なかには、研修をベースに独自の工夫を加えた改革案を練っている幹部もいるという。
 すぐに目に見える効果は表れず、息の長い取り組みだが、着実に改革につながっているという自負が、山崎さんにはある。今後はブカシで全国の幹部候補生を研修させ、将来の「改革の種」として全国に送り出すことに重点を移す。
 山崎さんは「経済成長著しいインドネシアでは今後ますます日本との結びつきが強くなる」と強調する。寄稿文では「いつの日か、日本の警察がかの地の警察から学ぶ日が来る」と結んだ。これが山崎さんの夢だ。

日イ関係 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly