成長率5.1%周辺を想定 三菱UFJ・江島支店長 下半期の国内経済展望
下半期が始まったが、自動車販売の減速傾向が続く。実質国内総生産(GDP)の伸びも上半期は昨年比で鈍化、楽観視できない状況が続いている。三菱UFJ銀行の江島大輔・執行役員ジャカルタ支店長はこのほど、「年間通してのGDP成長率は5・1%に届くかかどうかという水準にとどまる」と述べ、年初に示した5・2%を下回る見通しを示した。大統領選挙後は持ち直している業種もあり、「少しずつ成長の芽は出てきつつある」と話した。
上半期は中国経済の減速もあり、石炭などの主力産品の輸出が弱まった。江島氏は「内需も数字としては悪くないが、強くない。大統領選の影響で購買意欲が落ち、自動車や不動産の市況が悪かった」と振り返る。インドネシアでは販売金融規制の変化もあり、不良債権を増やさないようにローン審査が厳しくなっていることも、マイナス要素になったという。ただ、「中国やインドなど周辺の自動車マーケットでも良い場所がない」とも語る。
昨年1年間はルピア下落への対策で、計1・75%の利上げが行われた。「ことしに入り企業収益面で圧迫されている企業も多い」という。江島氏は「経済の実態に合わない形で金利が上がった。消費者に転嫁されず、企業が抱える形で年を越した。個人消費はそれほど冷え込まなかったが、企業体力の部分では厳しくなっている」と説明する。そうした状況もあり、ことし7月に0・25%の利下げが実施された。
年間のGDP成長率については、「5・1%に届くかどうか」。年初に立てた計画に到達していない会社も多いという。
昨年インドネシアは輸入が多く、貿易赤字に苦しんだ。経済閣僚らは「資本財の輸入が多く、インフラ投資が盛んである根拠だ」と主張していた。
現状は輸入が増えていないことで黒字につながっているという、安易に楽観視できない状態が続く。「結果的には貿易黒字を確保している。ただ、本当は経済が成長するには、まずは輸入が伸びてからというのが理想」と説明する。
■証券市場には資金流入
6月以降は、家電関係などで業績が持ち直している企業もある。建機部門も、足下ではある程度の受注がある。「選挙期間中に止まった公共工事がだんだんと動き出している。少しずつ経済成長の芽が出てきている」という。
S&Pなど世界大手格付機関による、格付け引き上げなどを背景に昨年11月以降、証券市場への資金流入が進んでいる。「外国投資家が国債を中心に買っている。この強気な姿勢が続く限りはルピア相場については安心できる」と説明。来年以降は「経済が上向く中で輸入が伸びてくる。その中である程度の貿易赤字は許容できる。それで上向いていければ」と話した。
ドル・ルピア相場では、ルピアが高めに振れ、1ドル=1万4千ルピアを切る水準になる展開も想定しているという。 (平野慧)