「契約が違う」「求人不足」 実習制度の日本側説明会 送り出し団体が対策要望
外国人技能実習制度の適正な運用に向け、日本の法務省出入国在留管理庁と厚生労働省は24日、西ジャカルタでインドネシアの送り出し機関を対象に説明会を開いた。日本側は、監理団体から悪質な要求を受けたら、「通報してほしい」と呼び掛けた。参加者からは、求人不足への対策や、契約通りの給与が支払われているかなど、実習先の調査の徹底を求める声が出た。
日イ両政府は6月25日に、技能実習に関する協力覚書を締結した。説明会はこれを受け開催され、23、24の両日、日イの政府関係者らが実習制度を改めて説明した。送り出し団体は、全国から約150団体が集まった。
日本側は24日、技能実習法を説明し、悪質な事例を交えて注意喚起をした。「監理団体の中には実習生の受け入れに当たり、1人100万円など、金銭を要求するところがある。送り出し国で接待を要求するところがあると聞いている。要求を受けたら(インドネシア)労働省に通報してほしい」と呼びかけた。
契約の事例として、「実習生が妊娠して解雇されたり、強制帰国されたりする事案がある。(背景に)入国前の実習生本人との個別の契約で、結婚を制約したり、妊娠したら契約を切るという内容がいくつか見つかっている。そういう送り出し機関からは受け入れられない」と注意喚起した。
質疑応答では、参加者から「(送り出し団体が)監理団体と1年かけて締結しても、求人が来ない」という意見や、「給与が契約書と違うことがある。受け入れ企業について、(3年に1度の現場調査ではなく)、もっと頻繁に調べてほしい。実習生は自分から相談しにくい」という要望が出た。
これに対し、日本側は「(監理団体の中に)運営実体のない会社があることは問題だと思っている。機構がしっかりと見ていきたい」と回答。給与の相違に関し、「(実際の契約と異なる)『裏契約』を監理団体と送り出し団体で結んでいる悪質なケースがあり、金が流れていることもある。絶対にやめてほしい」と念を押した。
企業の調査に関しては、対象が5万社があり、一斉に指導するのは難しいという。技能実習法の資料を求める意見もあり、詳細な資料(50ページ)は日本語のみだが、技能実習手帳など、母国語のガイドもあるとアドバイスした。
質問をした西ジャワ州ブカシ県の男性は「監理団体と半年、1年とかけて提携しても、求人が来ないことがある」と指摘。送り出し機関はインドネシア政府の認可を受けていても、原則、年間12人を送らないと政府から認定を取り消されることになっている、と懸念していた。
新たな在留資格「特定技能」の協力覚書署名と同じ日に結ばれた、技能実習に関する協力覚書は、監理団体や実習先、送り出し機関が処分された場合は、両政府で情報共有することを明記。
また、同覚書によると、日本は、インドネシア政府が認定した送り出し機関からの技能実習生のみ受け入れる。認定取り消しの送り出し機関は日本で公表する。日本が不適切な送り出し機関を通知した場合、インドネシア政府は調査し、日本側に報告する。
このほか覚書には、「保険金の徴収・違約金契約をしない」「(帰国者が)技能等を活用できるよう就職先のあっせん、その他支援を行う」ことなどが盛り込まれた。日本は協力覚書を結んだ各国と、同様の説明会を開いている。(木許はるみ、写真も)