酒井重工業、新工場開所 EJIP 製造拠点を集約、増産へ
建設機械の製造販売を行う酒井重工業(本社・東京都港区)は23日、西ジャワ州ブカシの東ジャカルタ工業団地(EJIP)で建設を進めていた新工場の開所式を実施した。同工業団地内に2カ所ある現地法人の製造拠点を集約し、生産効率向上を図るとともに、増産体制を整える。
新工場には海外輸出向けの生産を行うサカイ・インドネシア(SI)と、国内向けの生産を行うサカイ・ロード・マシナリー・インドネシア(SRMI)の生産機能が順次、移管される。
また、販売とアフターサービスを行うサカイ・セールス・アンド・サービス・アジア(SSSA)が、製品の実務研修などが可能な研修センターを同敷地内に設置する予定。製造、販売、サービスを担当する現地法人が三位一体となり、販路拡大を目指す。
SIの橋本聡取締役は、新工場設立の目的は生産効率と生産キャパシティーの向上と説明。出荷にかかるリードタイムを大幅に短縮し、主に東南アジア向けの輸出を強化していくという。
新工場の総敷地面積は5万1829平方メートルで、SIとSRMIの総敷地面積の約2倍に相当する。橋本取締役によると、同社の設備移管は既に完了しており、今月から生産を開始している。現在の生産能力は年間1200台で、SRMIの生産移管後は年間2400台を見込む。
SRMIの生産移管とSSSAの研修センター設立はことし12月となる見通し。また、来年初頭にはSIとSRMIの統合を予定している。
新工場で生産するのは、建設現場で地面を押し固めるのに用いる建設機械のロードローラー。インドネシアにおける主力モデルのSV525は、国内で約40%のシェアを持つ。今回の工場新設に伴い、国内向け新モデル「SV526」と輸出向け新モデル「SV521」を開発した。
また路盤再生工法に用いられるロードスタビライザー「PM550」の生産も計画しており、実現すれば酒井重工業の海外現地法人として初の生産拠点になるという。PM550は路盤再生工法に用いられる機械。舗装をすべて撤去し敷設をやり直す従来の工法に比べて、短時間かつ低コストで路面を再生できるという。
SSSAの猿渡澄男社長によると年間販売台数は4~5台程度だが、今後、施工のコンサルティングとセットで売り込みをかけ、世界各地の需要掘り起こしを狙う。モンゴル、ミャンマー、フィリピン、ベトナム、ケニア、ニカラグアで導入実績がある。
酒井重工業の2017年度連結決算において、インドネシアは同社が海外事業を展開する国のなかでも最大の約83億円を売り上げた。橋本取締役によると、ことし上半期は選挙戦前の需要落ち込みにより売上が若干低迷しているものの、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の再選により公共事業投資が増えると期待。万全の生産体制とアフターサービスで、需要の取り込みを図る考えだ。
SIは来年で設立25周年を迎える。同社の馬場洋社長は「次の25年に向けて大きな発展を遂げたい。そしてインドネシアはもちろん世界中のインフラ需要に貢献したい」と開所式のあいさつを締めくくった。
■海外事業が57%
酒井重工業は日本国内の公共事業投資が減速し始めめた95年ごろから海外事業に注力してきた。17年度の連結決算によると、グループ全体の総売上高約295億円のうち57・83%に上る約170億円を海外事業の売り上げが占める。
18年に創業100周年を迎えた。同社の酒井一郎社長は「更なる飛躍の柱となるのは海外事業と、新技術活用による次世代事業」と語り、インドネシアにおける新工場設立はその具体策の一つと説明。
「今回の新工場稼働により、海外事業全体の売り上げを年間200億~250億円に伸ばしていきたい」と意気込んだ。(高地伸幸、写真も)