ハラル鶏肉流入に懸念 地場業者協会 WTOブラジルに敗訴
ブラジル産鶏肉の輸入をめぐる世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続きで、インドネシア側の訴えが退けられた。地場家禽業者協会(PPUN)は22日、ブラジルからハラル鶏肉が流入し、国内の養鶏業者へ与える影響に懸念を表明、生産方式の効率化などの必要性を訴えている。
ブラジルは、インドネシアの鶏肉と鶏製品の一般輸入禁止や輸入許可手続きなどが、関税貿易一般協定(GATT)と農業協定に違反しているとWTOに申し立てた。WTOは2015年から日本を含む19カ国が参加するパネルを設置、審議し、輸入を禁止する措置がGATTに非整合的であるとして決着、昨年に両国による履行期間を終えていた。
ブラジルが問題を指摘した、ポジティブリスト(輸入可能品目)に鶏製品が記載されていない点(一般輸入禁止)をめぐっては、審議中に改訂が加えられたが、パネルは当該事項に実質的な変更はなく、GATTの条項と非整合的であると認め、一部内容に勧告が出された。
ブラジルは輸出品目としてハラル鶏肉と鶏製品の輸出を進めており、インドネシア市場への進出を望む一方、インドネシアは、重要品目である鶏肉の地場事業者の保護や輸入抑制の観点から防ぐ方針にあった。
価格安定のために輸入を制限しているとのブラジルの主張に関しては、証明が不十分だとして認められず、輸入許可に関する申請も期間制限が改訂により撤廃され、現在違反はないとの見方が出された。
インドネシアは市場規模が注目され、輸出先としての関心を集める一方、貿易制限的な政策を展開し、申立国、被申立国の両方でWTOの紛争解決手続きの案件数を増やしている。
また、今回の審議でインドネシアからはハラルを根拠に輸入を制限したとの主張もなされ、ブラジルとパネル側から一定の同調を得た。ポジティブリストの問題では、流通する製品のハラルを保証するために必要だと主張したが、パネルからは「ハラル製品の輸入も同時に阻止する規定」と判断された。
政府は貿易制限的な姿勢を継続し、国内流通製品のハラル保証も進めている。ハラルを根拠にした貿易制限に関しては、GATTや衛生植物検疫措置(SPS)の規定に曖昧な部分があり、今後この議論の当事国として注目される可能性がある。(大野航太郎)