「将来は起業したい」 第48回日本語弁論大会 バリ代表が優勝
第48回日本語弁論大会大学・一般の部が20日、中央ジャカルタの研究科学・高等教育省ホールで開かれた。全国の予選を勝ち抜いた13人がスピーチを披露。「夢を掴(つか)む踏み台としての努力」と題してスピーチしたグデ・スティルタさん(バリ代表)が最優秀賞に輝いた。(高地伸幸、写真も)
グデさんは小学校6年生の時に両親を亡くした。叔父に引き取られ貧しい暮らしを送っていたある日、使い古した靴をクラスメートに笑われたことがきっかけで、「自分の力で欲しい物を手に入れる」と決意したという。近所の庭掃除やペットボトル集めなどでお金を貯め、3カ月後、新品の靴を買うことが出来た。
奨学金を得て進学した日本語学科の授業で福沢諭吉のことを知り、苦しい生活の中でも努力を続けた福沢諭吉と自分の生い立ちが重なったという。「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という言葉に感銘を受け、「人はみな平等で、努力すれば夢が掴める」という思いを強くした。
将来は日本の会社で働き、日本人の働き方や経営手法を学び、故郷で起業したいと今の夢を語り、締めくくった。グデさんはことし開催される「ASEAN(東南アジア諸国連合)スピーチコンテスト」のインドネシア代表として、日本に招へいされる。
2位に輝いたノフィ・プルワンティさん(東ジャワ代表)のテーマは「無常」。自分を捨てて田舎で別の女性と結婚した恋人を引き合いに出しながら「いつまでも続かない、移り変わるもの」と無常の持つ意味を説明しつつ、「人は来年、来月、明日のことも分からない。だから楽しい」と述べた。日本語には面白い言葉がたくさんあり、それらを理解すれば日本人とより楽しくコミュニケーション出来ると話した。
また、スピーチ後の質疑応答では「元恋人についてどう思うか」と尋ねられ、「彼と結婚しても幸せにはなれなかったと思うので、今はこれで良かったと思っています」と答え、会場は笑いに包まれた。
3位のアディトヤ・ラフィフ・アルダナさん(中部ジャワ代表)は、父親が事業に失敗し学費を稼ぐために始めたアルバイトや、大学での教育実習や社会奉仕活動に参加した時のエピソードを紹介。「ささいなことにも感謝できるようになった」と語った。
審査委員長を務めた日本大使館の竹山健一広報文化部長は「どのスピーチも非常に素晴らしく、順位付けに苦労した」と語った上で、テーマが個人的体験に基づいたものが多かったと指摘。「個人の体験をより広いテーマに結びつけることができれば、もっと良くなる」とアドバイスした。
大会は国際交流基金と元日本留学生協会(プルサダ)、研究技術・高等教育省の共催。会場には出場者の親族らを中心に約300人が集まった。