まずコミュニケーション 金属労協 労使ワークショップ
全日本金属産業労働組合協議会(金属労協=JCM)は27日、西ジャワ州ブカシ県のMM2100工業団地で「第10回インドネシア労使ワークショップ」を開催した。労働組合全総連合(KSPSI)のイドルフ事務局長らのほか、日系企業の人事担当のインドネシア人社員や労働組合員など約150人が出席した。
午前の部ではブカシ・ファジャール・インダストリアル・エステート(BeFa)の小尾吉弘社長が、自身が丸紅で労働組合長を務めた経験を交えながら、労働組合と経営者はパートナー同士であると語り、「互いに心を砕いて、コミュニケーションすることが大切」と訴えた。
午後の基調講演ではJCMの浅沼弘一事務局長が登壇。労組側と経営者側が一つの事実に対して異なる解釈をしていることが多い労使紛争を、角度によって見え方が異なる「水晶玉」に例えた。「相手がどんな解釈をしているか考え、理解すべき」と語った。また、団体交渉や労使懇談会 以外にも、いつでも両者が話し合うことのできる「インフォーマル」な対話の機会を設ける必要性も強調。「とにかくコミュニケーションしましょう」と呼びかけた。
事例報告では、日系企業4社から労働組合や人事部の代表が、それぞれのエピソードを紹介した。トヨタ自動車の現地製造法人、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア(TMMI)のスブチャン・ガトット人事部長は、同社人事部が経営陣と労働組合間の仲介役として機能していると説明。普段から経営陣と労働組合の意見をくみ取り、共有することで、「問題の80%は団体交渉が始まる前に解決している」ことが多いと語る。同社は創業以来、一度も大規模なストライキが発生したことはないという。
同ワークショップに出席した総合塗料の製造販売大手・関西ペイントの現地法人、カンサイ・ペイント・インドネシア人事部のシシ・チトラ・スラ二さんは、労使問題の発生から解決に至る細かなプロセスが興味深かったと語り、「今後、労組問題が発生した際の参考にしたい」と話した。
同ワークショップは労使関係の課題について認識し、意見交換するため2010年から毎年開催。浅沼さんと小尾さんは「労組と企業が互いの意見をぶつけあうだけだったが、回を重ねるうち、お互いが率直な意見を出し合い建設的な話をする場所に変わってきた」と振り返る。今後も同ワークショップを続けていく構え。(高地伸幸、写真も)