【ごみ山に追うシャトルコック(下)】進学や就職にも挑戦 バドミントンきっかけに

 ブカシのごみ山やその周辺に住む子どもたちから成るバドミントンチーム。結成から5年たち、ここでの活動をきっかけに、外の環境で生活する子どもたちがチームから出てきた。

 ジョクジャカルタ特別州で、1日6時間の本格的な練習に励むノフィア・ラフマワティさん(20)も、かつてブカシのチームにいた1人だ。現在は、チームを支援するビンタン・キドゥル財団の本部にある、本格的なアスリートを目指すプロチームに所属している。国内大会に加え、最近では初の海外となるマレーシアで大会に出るなど奮闘を続ける。同財団によると、インドネシア代表とトレーニングをする話が来たばかりだという。
 同財団の本部には、集中的に練習できる環境があるが、ブカシの子どもたちにとっては、親元を離れてトレーニングをすることになる。技術があっても、両親の理解が進まなかったり、子どもたち自身が環境の変化を受け入れないなど、それぞれの事情で定着しないケースもある。
 子どもたちの進路は、プロの選手を目指すだけではなく、さまざまだ。
 ナタさん(18)は同財団からのサポートを受けて、スポーツ・アウトドア用品店で世界一の規模を誇る「デカトロン」のジャカルタ店に就職した。8月で1年がたつ。ナタさんに続いて、ごみ収集の仕事をしていたサンディさんも、就職を目指しているという。
 ニアさん(21)はジョクジャカルタ特別州にある大学に入学、心理学部で学んでいる。他にも、ブカシを離れて大学や高校に進む子どもたちがいる。
世界選手との交流も
 2016年には、アトランタ五輪金メダリストでインドネシアの伝説的選手であるレキシー・マイナキーさんがチームを訪れた。子どもたちと練習、ごみ山を訪れて両親と話をし、自身の人生について語るなどした。ことし1月に開催されたバドミントンの世界大会ダイハツ・インドネシア・マスターズでは、大会観戦や同大会で引退した混合ダブルス国内選手のデビー・スサントさんと面会するなど、世界レベルの選手と触れ合う機会も設けてきた。
 世界的選手との携わりには、同財団と協力してチームを支援する非営利団体「ソリバド(本部・フランス)」の存在がある。ソリバドは、結束や連帯を意味するソリダリティーと、バドミントンをかけた言葉。2009年12月に設立、現在は世界10カ国で活動を行っており、世界の有名選手たちが親善大使となっていたり、寄付をしたりしている。日本では女子シングルスの奥原希望さん、インドネシアでは女子ダブルスの国内トップペアの1人、グレイシア・ポリーさんやデビー・スサントさんなどが親善大使を務める。ほかにも有名選手たちが、収益の1%を寄付するなどしている。この1%寄付は誰でもできる。
 ソリバド(www.solibad.net/)やビンタン・キドゥル財団(yayasanbintangkidul.or.id/)の活動はウェブで知ることができる。
 それぞれの環境がある子どもたちだが、バドミントンをしていなかったらかなわない夢を追うことができる。シャトルコックを懸命に拾う子どもたちの目が光っていた。(おわり)(上村夏美、写真も)

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