インスタでソフト外交 石井正文大使 ランチ投稿 親近感アップ、フォロワー4万人超に
バティック(ろうけつ染め)のシャツを着てインドネシア料理を前に、はい、ポーズ――。日々のランチの様子などを投稿した石井正文駐インドネシア大使(61)のインスタグラムが話題を呼んでいる。4月下旬から急速に伸び始めたフォロワー数は12日までに4万7千人を突破。大使自らインドネシア文化への共感を示すソフト外交で、インドネシアの若年層らの間で親近感が生まれている。
「先日のメニューはバリのナシチャンプルです。(中略)バロンダンスを真似てみましたが、まだまだ修行が足りません」
ある日の投稿では、食事のプレートを前におどけた表情で踊りのポーズを決めてみせた。寄せられるコメントは多くがインドネシア語で、「Lucu(かわいい)」との反応も。写真から伝わる親しみやすさが若者の心をつかんでいる。
■若い世代へ発信
歴代の駐インドネシア大使でインスタを開設したのは石井大使が初めてだ。日本大使館は2013年ごろからフェイスブックを運用してきたが、若い世代により日本政府の活動を知ってもらおうと、18年4月にインスタを始めた。
石井大使は17年4月の着任以来、政府の活動や日イ関係についてつづったエッセーを大使館ホームページに載せてきたが、「オフィシャル感満載」のホームページへアクセスする人は限られる。広く見てもらうため、インスタではMRT(大量高速鉄道)などの事業紹介や要人との会合報告に加え、食事やバティックなど身近な話題について積極的に投稿してきた。
そんな中で特に受けたのが、インドネシア料理のランチ投稿だった。この日のメニューはロントン(ちまき)や野菜・牛肉が入ったスマラン料理の「ロントン・チャップ・ゴ・メ」。どこの高級店の料理かと連想してしまうが、一食3万~5万ルピア程度のものを、デリバリーサービス「ゴーフード」で注文することが多いという。
「こんな感じ?」「それ、いいですね」。食事が届き、秘書がスマホを構えると、ポーズを決め笑顔で撮影に応じた。
■地元メディアで話題に
フォロワー急増のきっかけは4月下旬、フォロワーの一人がツイッターで「最近のお気に入り」と大使のインスタを紹介したことだと思われる。それまで2千人台だったフォロワー数は4月中に2万人を突破し、今や5万人に迫る勢い。すでに地元メディア7社から取材を受けた。
「友好的でインドネシア料理好きの大使」(ジャワポス)との紹介も。反響について石井大使は「かわいいおじいちゃん、なんていうコメントもありますが」と苦笑いしながらも「非常にうれしい。励みになる」と話す。
「日本がインドネシアのことを大事に思い、非常に身近に感じているということを分かってもらうのは、いろんな仕事をする上で一番重要」と大使。インスタでのこうしたアプローチも「『外交』をやっていく上での基礎体力強化」につながると考えている。
「インドネシア料理はこれだけバラエティーがあっておいしいのに、国際的に認知度が低い」とも指摘した。現在のフォロワーはインドネシア人が中心だが、「日本サイドにインドネシアのことをより良く理解してもらうのも大使館の仕事。日本の人にも見てもらえれば」と話した。(木村綾、写真も)