MPV「エルティガ」投入 スズキ 最大セグメントで戦略強化
スズキの現地法人、スズキ・インドモービル・モーター(SIM)社とスズキ・インドモービル・セールス(SIS)社は二十二日、三列シート七人乗りの小型MPV(多目的車)市場に「エルティガ」を投入すると発表した。インドに次ぐ新興国向け世界戦略車の投入で、インドネシア事業の一層の拡大を図る方針。市場のボリュームゾーンである同セグメントで圧倒的な存在感を誇るトヨタ・アバンザとダイハツ・セニアにどれだけ肉薄できるかが注目される。
SIM社とSIS社は二十二日、南ジャカルタのグランメリア・ホテルで記者会見を開催。工業省のブディ・ダルマディ最先端技術活用主要産業総局のほか、現地パートナーであるインドモービル・スクセス・インターナショナル社の幹部らが出席した。
来イしたスズキ本社の鈴木俊宏副社長は「インドネシアは最重要市場の一つ。需要がきわめて高い三列シート乗用車に本格参入する。一台一台丁寧に売って、アバンザに追い付きたい」と話した。
エルティガは、排気量一三七三ccのガソリンエンジンでGA、GL、GXの三種のラインナップ。全長四二六五ミリメートル、車幅一六九五ミリメートル、車高一六八五ミリメートルで、二〇一〇年から世界で販売している新型「スウィフト」のプラットフォームを採用している。
インドネシアで生産し、価格(ジャカルタ・オン・ザ・ロード)はそれぞれ、一億四千三百万ルピア、一億五千三百万ルピア、一億六千五百万ルピア(約百二十七万―百四十七万円)。昨年十一月に約八年ぶりにフルモデルチェンジしたアバンザの販売価格帯(一億四千四百万―一億八千二十万ルピア)よりわずかに安い。
SIS、SIM社の内海章社長は「エルティガで勝負をかける覚悟だ。年間五万台の販売を目指す」と語り、現在二百二十八の販売店舗数を継続して増やし、販売員の教育に力を入れることで販売の拡大を進めていく方針を示した。
スズキの昨年の販売は約十万台、シェアが一〇・六%だった。二〇一三年の目標シェアは一五%。
スズキはこれまで、主力MPVとしてAPVを販売してきたが、居住性は高いながらもデザインは商用車的な要素も強いことから、販売が伸び悩んでいた。
会見に出席したスズキ本社四輪技術本部の松島久記チーフ・デザイナーは「エルティガは新時代のMPVだ」と説明。「スペースを確保しながら、一目で乗用車と認識してもらえるデザインに仕上げた。商用車の色合いが強いデザインは受け入れられなかった」と語った。
会見に出席したスズキ本社四輪技術本部の日比敏勝チーフ・エンジニアは、エンジン性能が高く、たくさん人や物が乗っていても性能を発揮できると強調。「他社製品と乗り比べ、何度もテストした。同クラスの中ではトップの燃費。乗ってもらえば良さが分かってもらえると思う」と期待を見せた。
小型MPVセグメントでは、機能性が高く、低価格なことから、アバンザ、セニアの人気が高い。インドネシア自動車工業会(ガイキンド)の統計によると、アバンザの販売は昨年約十六万二千台、セニアは六万七千台でこの二車種だけで全体市場の二五%超を占める。