【インドネシア投資レビュー】おすすめはシマトゥパン JLL古畑さん オフィスビル市場を解説
摩天楼が連なるジャカルタ特別州。近年のオフィスビル市場はどうなっているのか。事務所を開設、移転するなら今、どこが良いのか。不動産コンサルティングのジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)の古畑真シニアマネジャーに話を聞いた。
——ジャカルタのオフィスビルの集積地は。
スマンギ交差点周辺と、南ジャカルタ・TBシマトゥパン通り周辺に大きく分かれる。
ジャカルタ中心部では、かつてHI(ホテル・インドネシア)周辺に多かったが、近年渋滞の深刻化に伴い、高速道入り口に近づくため、南のスマンギ交差点周辺まで移った。
現在は、タムリン・スディルマン通り、TBシマトゥパン通り、ラスナサイド通り、S・パルマン~ガトットスブロト通り、サトリオ~マスマンシュール通りの道路沿いと、SCBD(スディルマン・セントラル・ビジネス地区)、メガクニンガンに集積されている。
シマトゥパンはかつてはオフィスがなく、あっても外資が入るには耐えられない物件ばかりだったが、現在は改善されている。高速道で東西に行けるほか、MRT(大量高速鉄道)で中心部にも行きやすくなった。中心部にオフィスを構える必要がないのであれば、賃料の観点からこちらがおすすめ。進出済み日系企業にも移転の動きがある。
——現在の賃料と今後の動向は。
ことし第1四半期の、中心部の平均賃料は1平方メートルあたり、グレードA(高級クラス)で月27万7326ルピア。14年の不況から需要が落ち込み供給過多になっている。IT産業が入居企業の半数を占める偏った形だ。しかし向こう2年までで供給が止まるため、賃料は回復するだろう。移転可能なら今が良い時期だ。
平均入居率は76%だが、ビルによって大きく差が開く傾向だ。ビル同士の有名企業の取り合いもある。
シマトゥパンなど中心部外の賃料は安定基調にあり、グレードA~Cを合わせて同11万5442ルピア。Aだけでも20万くらい。平均入居率は78%。シマトゥパンは今後ブカシへの高速2層化やLRT(次世代交通システム)の完成で価値が上がるとみられる。
——商業施設の動向は。
ジャカルタ特別州政府が渋滞対策のため都心部でモール単体での新規建設を認めない方針で、ほぼ供給が止まっている状態。そのため賃料が上がり、テナントに入る飲食業の負担になっている。
——飲食業の新規出店に適した物件は。
オフィスビルの周辺の会社からも客入りが見込める立地で、飲食スペースが充実しているオフィスビルの中がおすすめ。ビル側も良い飲食店があることがテナント呼び込みの材料になる。ただ、土日の客入りがない部分をどう見るか、というのが課題ではある。
——MRT開業の影響は。
MRT駅に近いビルから埋まっているのは事実だが、まだ賃料に反映されるほどの影響はない。近場の物件が埋まり切った後、来年の頭くらいまでに賃料に影響してくるのでは。
——事務所選びで重要な点は。
奇数偶数制に対応できるよう、裏口の有無などもチェックした方がいい。また、国内では面積をネットではなくセミグロスで提示するため、下見はした方が良い。
地場にも良いビルがあり、日系が固まっているところだけでなく、広い視野で探すことが重要だ。(大野航太郎、写真も)