チカラン日本人学校開校 52人で新たに船出 4年ごしの悲願
チカラン日本人学校(西ジャワ州ブカシ県デルタマス、CJS)は18日、開校式・入学式を開いた。全校生徒52人が、教職員と共に新築の校舎で歴史を紡いでいく。2015年の有志による活動開始から約4年。邦人社会の悲願だった学校の誕生は、地域コミュニティーの成長、日系企業の発展にも寄与しそうだ。
CJSはジャカルタ日本人学校(JJS)維持会が運営する新校という位置づけになる。開校前時点で、全世界の日本人学校は93校(補習授業校は含めない)で、15年にプノンペン日本人学校(カンボジア)が開校して以来、4年ぶりの学校誕生となる。
式には児童・生徒の保護者や石井正文駐インドネシア日本大使、ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)の東條観治理事長、学校設立に携わった人たちが集まり、総勢200人超えの規模となった。
CJSの酢谷昌義校長は式辞で「皆さんと私たちが力を合わせて取り組み、頑張っていくことが、この学校の素晴らしい歴史になっていく」と話した。子どもたちがたくましく成長するために「全力を尽くしていく」と抱負を語った。
CJSで小学部6年生として生活をスタートさせる増本陽さんは大きな体育館や運動場での授業を楽しみの一つとし、「(皆が初対面の中で)友だちをつくっていきたい」と話した。
校舎の基本設計・デザインはタタ・ヌサ・ティアラ・インターナショナル社、実施設計・施工は大林組が請け負った。18年7月に建設を開始し、ことし2月の校舎完工に間に合わせた。デルタマスを開発するプラデルタ・レスタリ社(大手財閥シナールマスと双日が出資)が土地と建物の所有権を持ち、学校側が借主として使用する。
23年度には250人の生徒数を実現させ、将来的には400人規模の学校になることを想定して、施設を用意している。
■大きな地域の期待
学校設立の背景には、チカラン地域周辺に日系企業が進出して邦人が増加する一方で、ジャカルタ~チカラン(約50キロ)間の渋滞が年々悪化している状況がある。長時間通勤や、帯同家族と離れて暮らすなどの事態が発生している。
状況を打開すべく企業経営者など有志が、15年から意見集約などに動き出した。17年3月には設立準備委員会が発足し、大使館やJJCと協力しつつ設立計画を具現化させていった。
地域の日本人の集まり、チカラン日本人会(CJC)の小林イツヨ会長は「学校ができて若い人が増えてくる。地域の活性化につながるので、バックアップしていきたい」と語る。学校周辺には新しく家族向けサービスアパートメントが建設される予定で、イオンモールの出店計画もある。都市形成に重要な学校の誕生により、「邦人社会に厚みが増す」(企業幹部)という意見は多い。
多くの日系企業・個人が学校設立、運営のために寄付をした。教育と居住、勤務環境の近接化が企業発展に必要という判断が根本にある。学校にかける期待は大きい。(平野慧、写真も、12面に関連)