【連載ルポ「ごみ山」】(中)ショベルに乗り、上へ 断崖絶壁の作業場 群がるごみ拾いの人々

 ごみ山の上に登ることになった。ありとあらゆる物が高さ20メートル近く積み上げられている。自力では登れず、ショベルカーの運転手が、アームの先のショベルを差し出してくれた。職員と2人、ごみのようにショベルに乗せられ、山の上の方の段へ運ばれた。 

 西ジャワ州ブカシ市のごみ最終処分場「TPAスムルバトゥ」。山の2段目は高さ数メートル。足元はごみが生い茂り、感触は柔らかい土のようで、注意しないと足が取られそうだ。アームが頭上のすぐ近くを勢いよく動き、車体が後進して迫ってくる。逃げようにも足場は不安定で、足の震えが止まらない。
 2段目、3段目、さらに上段でも、ごみを拾う「ウェイストピッカー」がショベルカーの周りで作業していた。ウェイストピッカーは、ペットボトルやビンなど、売れるごみを回収する。背中にカゴを背負い、素手でスティックを持っている。
 2段目の車両の周りは、20~50代くらいの男女5、6人。赤や黒のレジ袋が覆い尽くす斜面で、ごみが運ばれては群がり、拾い、を繰り返す。アームが忙しなく行き来し、当たりそうになった男性が転倒する場面も。
 「ガタン、バリバリバリ」。ショベルから割れ物のような音がしたり、頭上のショベルからごみが雨のように降ったりしても、視線は足元のごみに注がれている。
 あるウェイストピッカーの男性は、中身の詰まったプラ袋をスティックで一突きした。さらにもう一つの袋があり、もう一突きしても、またプラ袋。3回目でやっと、果物の缶詰が二つと、中にオレンジ色の液体の入った瓶、紙切れがこぼれ落ちた。男性は缶詰二つをかごに入れ、ビンの中身をその場に捨てて、かごに入れた。
 しばらくすると、急に強い雨が降ってきた。ショベルカーの後部座席に誘導された。ショベルカーが作業をするのは、地上から不安定に見えた凹型に窪んだ斜面の上だ。斜面が少しでも崩れたら……と思うが、運転手に身を任せるしかなかった。
 運転席の窓から地上を見ると、山の側面は見えず、断崖絶壁。ごみを満杯に詰め込んだトラックが次から次とやってくる姿が見えるだけだ。
 雷が強くなり始めた。ごみの中には、金属物もたくさん含まれるため、ウェイストピッカーが雷による被害で、亡くなる事故が起きているという。しかし、山の上の雨宿り用の小屋に、誰も避難はしていなかった。
 ショベルカーは落雷防止や地盤安定化のため、ごみと土を交互に積み上げていくが、土の搬入は半年に1度程度。
 ごみ山の上に1時間半、滞在し、再びショベルに載り、やっと地上に降りた。生きた心地がしないごみ山、それがウェイストピッカーの日常の仕事場。周辺には彼らの集落が広がっていた。(木許はるみ、写真も)(つづく)

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