「再審請求したい」 強制送還の邦人社長 ビザ万全期し事業再挑戦も
インドネシア・パプア州で出入国管理法違反(資格外活動)の禁錮刑などで計10カ月弱にわたり拘束状態に置かれていた東京都内のソフトウェア会社社長(51)が27日、強制送還を前にスカルノハッタ空港でじゃかるた新聞のインタビューに応じ、入管法違反で自身を有罪としたジャヤプラ高裁判決をめぐり、再審請求を検討していることを明らかにした。将来的には再入国し「完全な就労ビザを取りたい」と述べ、摘発された際に投資家ビザで関わっていた金採掘事業に再チャレンジする意向を示した。
昨年6月7日に同州のナビレ県内の金採掘地域で摘発されて以降、ティミカのホテルでの軟禁や入管事務所での拘束。ナビレへの移送と裁判、さらに検察側の控訴に対抗しての控訴審、禁錮刑などを体験した。
経験のない刑務所生活で、一番つらかったことは「結果がどうなるか見えてなかったこと」だと語る。「(ジャヤプラ高検が上告し)上告審が始まると、もう3カ月勾留される可能性があった。いつ出られるのか明確なことが全然分からなかった」
「情報がない」環境が過酷だったと言う。「ナビレ刑務所ではガラケー(旧来型携帯電話)を朝の3時間だけ使えたが、時差の関係もあり、ジャカルタの関係者とつながるのが週のうち1回ぐらいだった」
「出られると喜んだら、また拘束、その繰り返しで精神的にやられる。血圧が高いときは190~110になった」とふり返る。
一番うれしかったのは「(高検が上告せず)出所が確実になったとき。2週間前だ」。出所した26日には「久々にビールを飲んだ」と話した。
ナビレ県内での金採掘事業に関しては「投資家にご迷惑をかける部分があるので、今やめるわけにはいかない」と言う。「町なかを掘っても(金が)出る。井戸を掘って吸い上げると小さい粒が出てくる。大きさ、濃度など、採算が合うのがどこかということだけ。ヘリでないと行けないような所には、このぐらいのもあると聞いた」と、拳を握って金塊の大きさを示した。
「僕は投資家ビザで現場を見に行っただけで捕まってしまっている。それ(投資家ビザ)でいいはずだった。ところが入管は『働いている』という判断になってしまった。ならば、働くためのビザを取らなければまずい」と、就労ビザ取得の意向を述べた。
一方で「そこ(強制送還のブラックリスト)が消えない限り、ビザが取れない。(対応策を)調査している」と語った。
自身が無罪であるとの主張は一貫している。「(入管の摘発は)普通そのまま強制送還。これまで長引いたのは、裏があるのではと思っている。採掘利権の問題で引っ掛けられたと思う。最初から結論があったのでは」と話し、「再審を請求したい」と言明した。
今回の件では、日本の在マカッサル領事事務所などが担当官を現地に派遣した。社長は「『捕まってどうなるのか』と領事館に聞いたが、情報がない。こういうケースがあったというデータを共有したら(今後は)うまくいくと思う」と指摘した。
インドネシアについては
「何が起こるか分からない国だ」と、感想を述べた。(米元文秋、写真も)