国産マグロ、日本でブランド化 FTIジャパン 国営企業と供給網構築
水産物の輸出入を手がけるFTIジャパン(本社・東京都千代田区)は日本で、インドネシア産天然マグロの輸入販売を進めている。国営水産プリカナン・ヌサンタラなどと協業し、漁獲から販売まで一貫して行うサプライチェーンを構築、独自ブランド「マグロネシア」をつくり、一般消費者への普及を図る。
同社は日本周辺のマグロの資源量減少を背景に、水産資源が豊かなインドネシアに注目。2015年にマルク州アンボン市で事業を開始し、同年9月に日本での販売を開始した。18年12月に日本で「マグロネシア」の商標を出願し、ことし2月からは商品にロゴマークを貼って流通させている。
事業開始にあたっては、同社のインドネシア人元従業員が、国内に水産企業を設立し、協業体制を構築した。現在はアンボンの他に北スラウェシ州ビトゥン、ゴロンタロ州など約10地域からマグロを漁獲しており、18年度の輸出量は260~300トンを見込む。
漁獲したマグロはバリ州デンパサールに集積、空輸していたが、ことし2月から日本航空(JAL)と協業し、ビトゥンからの空輸も開始したという。ビトゥンではプリカナン・ヌサンタラの倉庫を利用し、マグロを2地点に集積している。
輸出しているのは、日本で刺身用に使われる生のマグロ。コールドチェーンが整備されていないインドネシアでは鮮度保持が難しい。同社の鳴海健太朗社長は「生の刺し身を食べないインドネシアの方に、鮮度の大切さを理解してもらうところから始めた」と振り返る。
現在は1トン当たり200キロを目安とした氷での保冷を徹底、プリカナン・ヌサンタラに日本人スタッフを派遣し、国際基準の衛生管理手法に基づいた品質管理と人材育成を行う。また事業が進展するなかで、地方自治体が輸送に使う道路の舗装を行うなど、協力を得られることもあったという。
一方、日本の消費者にはまだインドネシア産のマグロは認知されておらず、「衛生面は大丈夫なのか、と斜めに見られる状況」(鳴海社長)という。日本国内でも例がない、マグロの赤身のブランド化で、安心・安全なインドネシア産をアピールしたい考えだ。
昨年9月に中部スラウェシ州パル市を襲った震災では、現地の漁船が津波に流され供給が滞るなど、困難も多い。鳴海社長は「四季がなく、水産資源が豊富なインドネシアは(日本への)安定供給地になる。来年度以降、輸出量を倍増していきたい」と意気込んだ。(大野航太郎)