「実習生モスク」開設へ 気仙沼の飲食店横丁 祈りと交流の場に
技能実習生ら、ムスリムのインドネシア人が多く暮らしている宮城県気仙沼市で、「モスク」とインドネシア料理店が建設されている。場所は飲食店や銭湯が並ぶ「みしおね横丁」の一角。実習生らに祈りの場を提供するとともに、地元の人たちとの交流を盛んにする計画だ。
両施設は、イ実習生を受け入れる土木工事業「菅原工業」(本社・同市)が4月末に完成させる。「モスク」は敷地面積約30平方メートルで、インドネシアの感覚ではムショラ(礼拝所)のサイズだ。
気仙沼市には、332人の技能実習生が在留、水産関係などで働くイ人が多くを占める。しかし、最寄りのモスクは仙台市にあり、片道2時間。インドネシアの料理店も近くにはない。
同社の実習生サイフル・シディックさん(27)は気仙沼に暮らして3年目。「本当はモスクに行きたいけれど、仙台は遠くて一度も行っていない。近くにあれば絶対に行きたい」と話す。特に金曜日の昼と日曜日に行き、同郷やムスリムの仲間と会いたいという。
これまで「休日はずっと家にいる」生活。故郷の味は自炊で再現し、調味料はオンラインショップで買うが、種類が少ない。
同社の菅原渉専務(44)は、このような実習生の生活の苦労を身近に感じ、福利厚生も兼ねて建設を決めた。料理店はトレーラーハウスを改装し、店名は仮称で「Warung mahal」。
シェフを務める小出悟さん(26)は、同県内の水産加工会社で中国人実習生と働いていた経験がある。実習生の生活を見ていると、「毎日、職場と家の往復。休みも交通手段がないので、買い物に行って戻るくらい。職場の環境もよくなく、何のために来日しているんだろう」と違和感を持った。「人手不足で外国人に頼らざるを得ないときに、この状態は社会的によくない」と実習生のサポートに関心を持ち、店の運営者に抜擢された。
「みしおね横丁」は、飲食店、銭湯などが共存する異色の空間だ。自然と人が集まり「(実習生と地元の人との交流の場所になれば」と菅原さんは期待する。
同社はイ実習生を計12人受け入れ、16年には、イ国内に現地法人を設立した。ただ、現法で雇用していた同社の元実習生3人全員が、数カ月以内に退職。イ国内の実家が遠く、単身赴任だった。
「気仙沼にいたころ、実習生とコミュニケーションをとっているつもりだった」と菅原さん。「気仙沼を第二の故郷と思ってもらえるくらいに地元と実習生が関わっていたら、退社をちゅうちょしてくれたかもしれない」。新施設を通じて、気仙沼への愛着を深めてもらいたい考えだ。(木許はるみ)