「送り出し国には損失」 4月施行の改正出入管法 アイム・ジャパン柳澤共榮会長
日本最大規模の外国人技能実習生の監理団体「アイム・ジャパン」(国際人材育成機構)の柳澤共榮会長(75)はこのほど、ジャカルタでインタビューに応じ、4月に施行される改正出入国管理法について「改正前は両国にウィン・ウィンな制度だったが、今回は(恩恵を受けるのが)日本だけの制度だ」と指摘した。
――同法では、新たな在留資格が新設され、条件を満たせば、実習生に永住権が与えられるとされる。
(実習生が帰国しなければ、)優秀な子だけ日本に残ることになり、個人にとってはいいが、送り出し国にとっては損失になる。かつ、永住権を得られるなら、それは移民と言える。インドネシア人は永住したいという人が少ない。
――同法では、一部の実習生に転職の自由が与えられるとされる。
実習生は給与が高い都市部に行こうとする。人材が一番疲弊している地方の問題は解決しない。政府は、それに対する具体案も示していない。
――1月に広島県東広島市で、アイム・ジャパンの監理先で働くイ人実習生が死亡した。
私たちが25年続けてきて、今回が初めての労災の死亡事故。同社は作業標準を守っていた。同じ実習先のイ人(8人)が多少神経質になっているので、アイム・ジャパンのベテランのイ人職員を毎週派遣して、安心感を取り戻すようにしている。
――日本の人手不足が深刻化している。アイム・ジャパンの受け入れ状況は。
本年度は5カ国から4千人を受け入れ、来年度は毎月300人以上、8月には月400人を超える見込み。企業への内定率は、5倍に保つようにしている。応募が不足している分野は介護職。500~600人の要望に100人しか集まらないこともある。
――同法改正に当たり、実習制度のさまざまな側面が報道された。「研修が厳しい」「会費が高い」と言われることがある。
(入国前の研修で、遅刻を1分でもすれば、午前中は立ったまま勉強をするなど)外からスパルタ教育と見られることもあるが、(事前講習の)4カ月間で人間改造をするのは大変。企業の会費が高いと言われることもあるが、それだけの資質の人を受け入れられる。
――イ国内では、元実習生らがIKAPEKSI(インドネシア研修生実業家協会、通称・社長の会)をつくっている。
元実習生の中には、500人を雇用している会社や、MRTの新駅の建設に関係する会社もある。インドネシアなど5カ国からアイム・ジャパンが受け入れていた元実習生7千人がこれまでに起業した。元実習生の企業で、従業員やその家族を合わせると、約210万人の生活が支えられることになる。それだけ日本ファンがいるとしたら、50年後も日本を大事にしてもらえる。(木許はるみ、写真も)
アイム・ジャパン
1991年に設立された公益財団法人。インドネシア、タイ、ベトナム、バングラデシュ、スリランカの5カ国政府が選抜した実習生を、約26年で5万4千人(約6割がイ人)受け入れてきた。外国政府と協定を結び、実習生を直接受け入れている唯一の監理団体。2018年度、2億5千万円(前年度比約1億300万円増)の収益を見込む。会員企業は1508社。実習生の給与は額面で平均約17万円、全国一律になるよう努めているという。