新設国際イスラム大に注目 インドネシアの穏健主流に協力を 中村光男 千葉大名誉教授
イスラム研究の大家として知られる中村光男・千葉大学名誉教授が17日、中央ジャカルタで講演し、日本がインドネシアの「穏健・主流イスラムの国際展開」に協力していくことの重要性を指摘した。世界のイスラム高等教育機関の間でサウジアラビアを中心とする厳格なワッハーブ派の影響が広がる状況の中で、新設されるインドネシア国際イスラム大学(西ジャワ州デポック市)が果たす役割に注目していると語った。
講演は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所が企画、国際交流基金ジャカルタ日本文化センターが協力した。会場の同センターには、在留邦人や若いインドネシア人ら約100人が詰めかけ、同研究所の床呂郁哉教授や同センターの塚本倫久所長も登壇した。
講演のタイトルは「インドネシアのイスラム:Q&A」。日本人が抱くことがある「イスラム教徒が絶対多数なのに、なぜ国教ではないのか」との疑問について、独立準備段階の憲法草案にあった「イスラム教徒はイスラム法を順守すべし」との規定に、キリスト教徒の多い地域の代表が反対、建国5原則に「唯一神への信仰」を盛り込むことで妥協が図られた経緯を紹介した。
こうしたインドネシアの穏健なムスリムは「いい加減か」との疑問に対しては、「決してそうではない」と否定。「モスクが全国に約80万カ所あると報じられている。一つの村に10カ所余りあることになる。礼拝などの六信五行の実践において、世界でも極めて真面目な優等生と見なされるべきだ」と述べた。
「日本はインドネシアのイスラムとどうつき合うべきか」との問いには、「イスラム穏健・主流」による、災害・難民対策、紛争防止・解決、貧困撲滅などの活動に、官民で共同参加していくことの重要性を指摘。新設国際イスラム大学が世界の知的拠点となるよう、教育・研究での協力・交流を進めたいと話した。
会場からは、大統領選をめぐるイスラム団体のナフダトゥール・ウラマ(NU)とムハマディアの対立構図についての質問があり、中村名誉教授は、NUの訴えるイスラム・ヌサンタラ(インドネシア島しょ世界)とムハマディアが掲げる啓蒙・進歩を合わせた、進歩するインドネシア地方文化と共にあるイスラムが「私の希望だ」と答えた。(米元文秋、写真も)