津波高さ10メートルも 今村、有川両教授パルで現地調査 地滑りが引き金か
9月28日の中部スラウェシ地震による津波の高さが、ビルの3階に達する10メートル前後に達した可能性が高いことが、東北大災害国際研究所の今村文彦所長(津波工学教授)と中央大理工学部の有川太郎教授(海岸・港湾研究)による被災地での予備調査で5日、分かった。陸上、沿岸、または海底の地滑りが津波の引き金となったとの見方も浮上した。
両教授は今回の地震の被害の甚大さと複雑さを重大視、4日夜に被災地の中スラウェシ州パル市に入り、5日に調査を行った。
今村教授はパル市タリセ海岸を調査。「津波の水位が上回った」との住民の証言がある白馬像の高さをレーザー計で測り、海水面からの高さが11・3メートル(地面の高さ2・5メートル、像の高さ8・8メートル)であることを確認した。なお、「馬の足元まで津波につかった」との証言もあり、足元までの高さを測定すると、海水面からの高さが9・2メートルだった。
津波の高さをめぐっては、数々の証言があるが、白馬像は周囲の建物からの独立性が高く、計測結果と総合すると、津波が10メートル級だった可能性が高まった。
有川教授は、パル市東側海岸線の被災地の北パル郡パントロアン、マンボロ、トンドの3村で津波の高さを測量、「最大で10・1メートルのスプラッシュがあった」と語った。パル市に近づくに連れ、津波が高くなっていることも判明した。
有川教授がマンボロでは住民の間で「津波が15メートルだった」とする証言があったと警官らから聞き、「波が(壁などに)ぶつかって起きるスプラッシュでは、約3倍の高さまで跳ね上がる」と説明した。
また、地震発生から津波襲来まで間隔が極めて短い▽被害が海岸から200メートルほどに限られている▽「複数の津波がぶつかってしぶきが上がった」との住民証言――などから、今村教授は「地震によって引き起こされ陸上、沿岸、または海底の地滑りによって起きた津波の可能性がある」との見方をした。
今村教授によると、陸上の地滑りによる津波は、18世紀に雲仙普賢岳噴火で起きたとの記録がある。また、1999年のトルコ・イズミット地震では沿岸地滑りが津波を引き起こした。98年にパプアニューギニアでは津波は海底地滑りによって起きた。
今村教授は「わが国でも地震をきっかけに、同様の津波が発生する恐れがあり、スラウェシ島地震の経験をインドネシアと共有し、防災対策を強化していく必要がある」と指摘した。
今後、今村教授らは各国の津波専門家と協力し、今月中旬にも現地で本格的な調査に着手する意向だ。(米元文秋)