介護実習生 第1陣 19人きょう日本へ出発
インドネシア第1陣となる介護職の技能実習生19人が29日、日本へ向けて出発する。外国人技能実習制度の介護職は昨年11月に新たに追加されたばかりで、他国からもまだ例が少ない。日本の介護人材不足を背景に、今後もインドネシアからの派遣が続く見通しだ。
19人のうち13人の事前研修などを担当した実習生送り出し機関のミノリ(西ジャワ州ブカシ県)で28日、第1陣の介護実習生の壮行会が行われた。同社からは29日に13人、9月中に9人の計22人が介護実習生として出発する。このほかにも17人が事前研修を受け、在留許可などの手続きを待っている状態という。
22人は20代が中心で、うち20人が女性。いずれも大学や職業訓練高校(SMK)で看護や助産師学、薬学などを専門に学んだ。
ミノリで1年~1年半日本語を学んだ後、ジャバベカ・ロングライフ・シティがブカシ県で運営する日系の介護サービス付き高齢者住宅で座学と実技で計160時間の研修を受けた。日本でさらに約2カ月間の日本語・介護講習を受けた後、関東や大阪府の施設で最長5年間働くことになる。
技能実習制度の介護職は2017年11月に初の対人サービス職種として追加された。1例目となる中国人2人が7月に日本に到着したばかり。インドネシアからは、これまで経済連携協定(EPA)を通じて介護人材を受け入れてきたが、実習制度ができたことで、敷居がより低くなり門戸が広がったと言える。
ただ、日本語能力については、来日前に日本語能力試験の「N4(基本的な日本語を理解できる)」相当が、入国後1年以内に「N3(日常で使われる日本語をある程度理解できる)」の取得が求められている。
ミノリで学んだ22人のうち16人は、出発前の段階ですでにN3を取得した。西ジャワ州チルボン出身で4年制大学の看護学部で学んだハリス・マルギヤンさん(27)もその1人。「まだあまり上手く話せない。施設で言葉がわからなかったり間違ったりしたらと思うと……」と不安げだ。
7人兄弟の長男で、1970年代後半から6年間エビ漁師として日本の船に乗った父親のストリスノさん(64)の影響で日本に興味を持った。「日本で経験を積んでほしい」との父親の期待に「頑張って働いて、いつか両親をメッカに連れていってあげたい」と意気込む。
介護に近い分野で職務経験がある人もいる。中部ジャワ州ボヨラリのムティアラ・ヌルアイニさん(24)は、大学の看護学部を卒業後、高齢者宅に住み込みで身の回りの世話などをする「ホームケア」の仕事に就いた。「介護の仕事は大変だけど、人を手伝うことが好き」。一方で「やっと日本に行けるという気持ちだけど、日本の働き方になじめるかが心配」と言う。
共に看護学部出身のハリスさんとムティアラさんは、帰国後は母国で学び直し、看護師として働きたいと考えている。インドネシアへの技術移転を目的とした実習制度だが、「インドネシアには介護の仕事がまだまだ少ない」と関係者は口をそろえる。
ジャバベカ・ロングライフ・シティの清家豪取締役によれば「今は介護施設自体が少ない」。同社の介護付き高齢者住宅には日本人2人を含む5人が入居しており、実習生たちはベッドから車椅子への移動、入浴介助などの実技も学んだ。インドネシアは2035~40年に高齢者時代を迎えると言われており、「政府も、介護技術を少しずつ浸透させたいと考えている」と清家さんは指摘する。
ミノリのアグスティヌス・ワヒュー・ウィジャヤ社長も「日本は介護人材が不足しているが、将来インドネシアも日本と同じ道を歩まなくてはいけない」と指摘。これから旅立つ実習生に向けて、「日本語を勉強して、日本の良いところを見つけ、将来に役立ててほしい」と語った。
実習生の来日に必要な技能実習計画の認定を行う外国人技能実習機構によると、8月10日時点で、介護職で認定が下りた実習生は178人。在留許可などが下り次第、順次入国する。(木村綾)