自転車シェア、モナスで開始 スマホでレンタル 来月にも公道試験
ジャカルタ特別州で、スマートフォンのアプリを使った自転車シェアサービスの試みが始まっている。州は地場スタートアップ企業と提携し7月下旬、モナス(独立記念塔)広場で運用試験を開始。9月にも、モナスから約3キロ先のホテル・インドネシア(HI)周辺まで試験エリアを拡大する見通しで、公共バス利用者らをターゲットにする。定着すれば、車社会のジャカルタの景色にも変化をもたらしそうだ。
試験開始から初の日曜日となった7月29日、モナス広場では、黄色と紫の自転車に乗る親子らの姿があった。南ジャカルタ区チランダックの主婦ミスタリさん(30)は2歳の娘を連れ、「モナスは広くて歩くのは疲れる。自転車を無料で借りられるのはうれしい」と話す。
使っているのは、サイクリングを意味する「GOWES(ゴーウェス)」のアプリ。名前や電話番号、住所などを登録し、自転車についたQRコードをアプリで読み取ることで鍵が開く。好きなだけ乗ったら広場内7カ所にある駐輪場に戻し、鍵を掛ける。
■地場企業と提携
運営するのは、2年前に創業し、デジタル地図「JIMATT」を手掛けるスルヤ・テクノロジ・ペルカサ社。スマートシティー化に取り組む州と提携し、3カ月間、モナス広場で自転車100台を試験的に無料で貸し出している。JIMATTはジャワ島、バリ島の8割をカバー済み。イワン・スルヤプトラ社長(48)は「中国やシンガポールでの自転車シェアの流行を受け、自社のシステムを活用して取り組めると思った」と話す。
同社はジャカルタに先駆け、バリ島で6月にサービスを開始、観光客を中心に利用者を増やしている。ジャカルタの街を自転車で走る人は少ないが、イワン社長は「開始から10日間で1万6千人以上がアプリをダウンロードした」と手応えを感じている。
州政府が目指すのは公共交通機関との相乗効果。州ジャカルタ・スマートシティー局によれば、9月にまず、トランスジャカルタ(TJ)バス停や州庁舎前、ゴンダンディア市場前などモナス~メンテン周辺の15カ所に専用駐輪場を設置し、公道での運用試験を始める計画という。スティアジ局長は「TJの利用客増加と二酸化炭素の削減につなげたい」。来年開通予定の大量高速鉄道(MRT)駅にも駐輪場を作りたい考えで、将来的には利用エリアを拡大し、自転車専用レーンも設けたいとしている。
自転車の利用料金は1時間5千ルピア前後を検討中で、TJ利用者への割引や1カ月の定期料金も設ける方針。電子決済にも対応していく。
■海外でも広がり
便利さと低価格が売りのシェア自転車は近年、中国で大流行。海外でも広がりを見せている。
ジャカルタでも昨年、中国に拠点を置くスタートアップ企業「Ourbike(アワーバイク)」がアンチョール公園内で試験運用したが、本格導入には至らなかった。州政府が自転車シェアを始めるのは今回が初めてで、ゴーウェスの他、中国の大手「Ofo(オフォ)」やシンガポール初の「Obike(オーバイク)」とも提携に向けた協議を進めている。
一方中国などでは、大量の放置自転車が社会問題化。モナスでもさっそく、ペダルの取れた自転車や倒された放置自転車が見つかった。イワン社長は「スタッフが夜に巡回して放置自転車を駐輪場に戻している。公道での試験開始後も、ジャカルタの景観を悪くなるようなことにはしない」と語った。(木村綾、写真も)