日本軍政期を振り返る プロパガンダ資料134点展示 国立図書館で10日まで
日本軍政期の1942~45年に日本が発行していたプロパガンダ(宣伝)資料や当時の写真を紹介する企画展が2日、中央ジャカルタの国立図書館で始まった。インドネシア初の民族団体「ブディ・ウトモ」が結成された「民族覚醒の日」110周年と両国の国交樹立60周年の機会に、当時の資料で歴史を振り返ろうと、教育文化省やアンタラ通信が企画した。
会場には42年3月8日、日本軍がオランダ軍に降伏を求めたカリジャティの会議からインドネシア独立に至るまでの道のりをたどった写真や絵、新聞記事など134点が並ぶ。宣伝工作のため当時インドネシアに派遣されていた漫画家、小野佐世男の作品が多い。強制動員された「ロームシャ(労務者)」や郷土防衛義勇軍「ペタ」の様子から、日本の歌を習う女性など日常を捉えたものまで、幅広く展示された。
「決戦ダ」「撃ちてし止まむ」――戦意高揚を狙ったプロパガンダポスターも並ぶ。展示資料を提供した慶応大学の倉沢愛子名誉教授は「国立図書館に所蔵されていた非公開のプロパガンダポスターなど、日本人も知らない資料が展示されている」と評価する。
2日の開会式には在インドネシア日本大使館から小野啓一次席公使や中村亮公使らが出席した。小野公使は展示を見て回り、「実際の素材に基づき歴史を学ぶことはインドネシアにとっても日本にとっても大事。歴史をしっかり見つめた上で関係を発展させていくことが重要だ」と話した。
日本側は今回、資料集めなどでも協力したと言い、歴史学者でもある教育文化省のヒルマル・ファリド文化総局長は「この種の展示会で日本政府と連携するのは初めて。研究面での両国の協力も深めていきたい」と期待する。
この日は開会式に合わせて、研究者らのセミナーも開催、地元記者や政府関係者、教員など約170人が招かれた。コンパス紙の記者デオニシア・アルリンタさん(24)は「学校ではロームシャなど、日本の植民地支配の悪い面しか学ばなかったが、きょうは当時の文化など良い面を知ることができた」。「クバヤを着たインドネシア人と着物を着た日本人が1枚の写真におさまり、一緒に羽根突きをしている写真が印象に残った」と話していた。
日本軍政期のプロパガンダ資料が一般の目に触れる機会は限られていたが、ジャカルタでは5月にも同様の展示会が開かれたばかり。今回の展示会は規模も大きく、倉沢氏は「これまで残酷さが強調されてきたが、日本占領を多面的に見ようという動きが出てきた」と分析する。
図書館での展示は10日まで。14日~9月14日には、中央ジャカルタ区パサールバルのギャラリー・アンタラで展示する。入場無料。(木村綾、写真も)