閣僚かイスラムか 副大統領候補選び大詰め ジョコウィ氏
2019年の大統領選の候補者登録締め切りまで10日で1カ月。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領(57)の副大統領候補の人選が最終段階に入っている。票の上乗せを狙って「イスラムに強い候補」の名前が取り沙汰される一方、スリ・ムルヤニ財務相(55)やマーフッド元憲法裁判所長官(61)ら実績のある閣僚経験者を有力視する見方も出ている。
正副大統領候補の登録は8月4〜10日に行われる。ジョコウィ氏は8日、所属する最大与党・闘争民主党(PDIP)党首のメガワティ元大統領と西ジャワ州ボゴール市バトゥ・トゥリス宮殿で会談。その後、副大統領候補を間もなく発表する見通しを明らかにした。
大統領選はジョコウィ氏がリードを保っているが、再選を阻止したい野党やイスラム勢力は「外国人労働者流入」や「親中」「共産党との関係」を理由に、「ジョコウィは反イスラム」と攻撃を仕掛けている。ジョコウィ氏の支持層以外からどれだけ票を上乗せできるか、副大統領候補の人選が勝敗を分ける鍵となる。
まず挙がったのはイスラムに強い候補。今月4日に突然、ジョコウィ氏支持へ転換を表明したザイヌル・マジ(通称TGB)西ヌサトゥンガラ州知事(46)は著名なイスラム指導者として知られる。前回の大統領選ではプラボウォ陣営の代表を務め、ジャカルタ特別州知事選では反アホック運動をリードした一人。ザイヌル氏と組めば、イスラム層へのアピールや、ジョコウィ氏が力を入れる東部インドネシアの開発につなげられるとの見方がある。
連立与党からは自党の幹部を推す声がある。ゴルカル党は工業相のアイルランガ・ハルタルト党首(55)、メガワティ氏は娘のプアン・マハラニ人間・文化開発調整相(44)を希望しており、政党間の調整は容易でない。
このほか軍出身の野党候補、プラボウォ・グリンドラ党党首(66)との戦いを念頭に軍人候補の登用を望む声もあり、1月に大統領首席補佐官に就任したムルドコ元国軍司令官(61)らの名前が挙がっている。
「イスラムに強い候補」を有力視する見方がある一方で、国立インドネシア科学院(LIPI)のシャムスディン・ハリス上級研究員(60)は、「複数あるイスラム組織の一つから候補者を選べば対立が起きる可能性がある。イスラム指導者から副大統領候補を選ぶ可能性は低い」と予想する。
アイルランガ氏など政党党首と組む可能性もあるが、特定の政党幹部の登用は連立与党内で対立や分裂のリスクを伴う。
■「スリ氏可能性高い」
シャムスディン氏が現時点で副大統領候補として最も有力視するのはスリ氏やマーフッド氏。スリ氏は世界銀行専務理事を経験してジョコウィ政権で財務相に返り咲き、マーフッド氏はアブドゥルラフマン・ワヒド政権で大臣を歴任した。「2人とも実績ある専門家として評価されている。ジョコウィがこの先、経済を優先するならばスリ氏を選ぶ可能性が高い」と分析した。(木村綾、アリョ・テジョ)