森林政策を抜本転換 持続可能な開発へ、地域も共存
世界で有数の森林資源量を持つインドネシアが、森林政策の抜本的な改革に乗り出した。従来の森林資源を伐採し、木材として経済的に活用することを主眼とした「木材ベース」の森林管理から、国連が2015年に定めた「持続可能な開発目標」(SDGs)を踏まえ、環境保全機能や周辺住民の福祉向上など、森林が持つ幅広い機能を生かして海洋立国政策同様に森林大国を目指す。
6月下旬、在日インドネシア大使館主催、早稲田大学共催で開かれた日本インドネシア国交樹立60周年記念「森林セクター・セミナー」で、環境林業省のヒルマン・ヌグロホ・イブラヒム持続的生産林管理総局長は「政府は森林政策を資源管理からコミュニティー・ベースの森林政策へとパラダイム(基本的考え方)転換した」と明言した。
具体的には、森林を周辺地域住民の生活の場として資源保護、住環境保全、地球規模での気候変動を防ぐための森林の適切な保全活動、オランウータンをはじめとする各種動物や植物の生態系の保全・活用、各地の森林地帯を中心にしたエコツーリズム(環境保全を考慮する観光)の振興、非木質林産物(蜂蜜など森林や草原で採取、生産できる各種産物)など、森林が持つさまざまな潜在力に着目、環境にやさしい持続的な森林の維持、管理を目指している。
こうした政策転換を国際社会に伝える手始めに、インドネシア政府は歴史的に木材輸入や各種森林技術支援で同国と関係が深い日本を選び、国交樹立60周年の記念行事の一環として森林セミナーを日本で開催することにした。日本側からは林野庁、社団法人森林技術協会、公益財団法人国際緑化推進センター、W—BRIDGE(早稲田大学とブリジストンの環境問題研究協力組織)が後援した。
インドネシアは世界有数の熱帯雨林国で、カリマンタン島やスマトラ島から、合板原料としてラワン材(メランティ)の原木はじめ木材が1960年代から日本にも大量に輸出されていた。この結果、熱帯雨林の荒廃が進みさらに2010年代には、パーム農園を開発するため原生林が縮小、同時に大規模な森林火災も相次ぎ、環境林業省は抜本的な森林政策の見直しを迫られていた。(小牧利寿、写真も)